【アンチエイジング】糖尿病治療薬メトホルミンの抗老化作用の正体

論文タイトル

Benefits of Metformin in Attenuating the Hallmarks of Aging

出典

Cell Metab. 2020 Jul 7;32(1):15-30.

Benefits of Metformin in Attenuating the Hallmarks of Aging - PubMed
Biological aging involves an interplay of conserved and targetable molecular mechanisms, summarized as the hallmarks of aging. Metformin, a biguanide that comba...

確認したいこと

先日のブログに引き続き、アンチエイジングへの効果が謳われているメトホルミンについて、調査しました。

要旨

メトホルミンのアンチエイジングに関する分子メカニズムと効果について解説したレビュー論文です。

用語

TAME: targeting aging with metformin

章立て

  1. 緒言
  2. 老化におけるメトホルミンのメカニズム
  3. メトホルミンの効果
  4. 第一の標的
    1. 栄養探知の制御機能低下
    2. メトホルミンによるAMPK/SIRT1の活性化とIIS/mTORC1の不活性化
    3. 細胞内伝達機能への影響
    4. メトホルミンによる炎症性サイトカインの抑制と、NFkB阻害
    5. メトホルミンによる腸内メタボロームへの影響
    6. タンパク質恒常性の低下
  5. 第二の標的
    1. ミトコンドリアの機能不全
    2. 幹細胞の疲弊
    3. メトホルミンによる幹細胞の若返り
    4. エピジェネティクスへの影響
    5. メトホルミンによる転写活性の制御
    6. メトホルミンはTerraを活性化して、テロメアの減少を抑制する
    7. 細胞の休止
    8. メトホルミンによるSASPの機能低下
  6. メトホルミンの副作用
  7. 結言と展望

解説など

メトホルミンは、糖尿病に対する経口治療薬です。60年以上にわたって使用されてきた実績がある薬ですが、近年アンチエイジングに効果がある可能性があり、研究が進められてきました。具体的には、ヒトの老化に対する有効性を検証するための臨床試験である、TAME研究などが進行しています。

メトホルミンは、ミトコンドリア複合体の機能を阻害します。このミトコンドリア複合体は、代謝および酸化経路に寄与して、様々な細胞内シグナル伝達分子の活性化に関わります。これによる複合的なメトホルミンの作用が原著論文の図1に図示されています。

各分子への影響も表にまとめられています。どのモデルで評価されているか(細胞株、線虫、ショウジョウバエ、マウス)で分類されていて、非常に体系的に整理されていました。

メトホルミンの副作用は軽微でコントロール可能であるといわれています。この副作用は主に腸内微生物環境の急激な変化によるものである可能性があるとのことです。

NMNと同じく、アンチエイジングに関わる臨床治験が蓄積されることが望まれます。

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