【アンチエイジング】今話題の成分NMNの、糖尿病への効果を検証

論文タイトル

Nicotinamide mononucleotide increases muscle insulin sensitivity in prediabetic women

出典

Science. 2021 Jun 11;372(6547):1224-1229.

Nicotinamide mononucleotide increases muscle insulin sensitivity in prediabetic women - PubMed
In rodents, obesity and aging impair nicotinamide adenine dinucleotide (NAD+) biosynthesis, which contributes to metabolic dysfunction. Nicotinamide mononucleot...

確認したいこと

先日のブログから、NMNの臨床試験事例について調べてみました。

要旨

ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)摂取時のインスリン感受性について検証した、臨床結果が示されています。

解説など

NMNは、アンチエイジングに重要な、NAD+の生合成に重要な成分として知られています。近年ではサプリメントが様々なメーカーから販売され、話題になっている栄養素です。NMNのアンチエイジングへの効果は、動物実験や分子生物学の知見からの推測であり、臨床における明確なアンチエイジングへの寄与は示されていません。

本論文では、過体重の糖尿病患者に対して、250mg/日NMMを摂取した結果を示しています。

評価ポイントは下記のとおりです。

  • 身体組成
  • 骨格筋のインスリン感受性
  • インスリンシグナル伝達
  • 筋肉組織中のNAD+含量
  • 遺伝子発現プロファイル

臨床試験結果

プラセボ投与と比較してみると、筋組織中でのインスリン感受性がNMN摂取後に25%上昇していることが示されています。インスリンシグナル伝達経路に重要な、AKTとmTORのリン酸化量も多かったとのことです。

遺伝子発現を確認すると、PDGF経路に関与する遺伝子の上昇がみとめられました。この結果から、NMNが筋原性細胞を増加させ、PDGFシグナル伝達を増強させることが示唆されます。このPDGFシグナルが先ほどのインスリン刺激によるAKTリン酸化を亢進させるのです。

医療における価値

NMNによってインスリン感受性が増すことは、糖尿病治療において有益となる可能性がありますが、本論文では健康における価値については言及していません。筆者らは、NAD+がミトコンドリアの機能に重要であることから、骨格筋ミトコンドリアの呼吸機能や身体機能への影響も評価していますが、プラセボと比較して有意な差はみられなかったとのことです。

今後の展望

インスリン感受性の上昇は、筋組織特異的であり、肝臓や脂肪組織への影響は観察されませんでした。また、NAD+産生の別の中間体であるニコチンアミドリボシド(NR)は全身、筋組織ともにインスリン感受性に影響を及ぼさなかったとのことです。これらの原因については、さらなる研究が必要です。

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