論文タイトル
High-throughput characterization of protein-protein interactions by reprogramming yeast mating
出典
Proc Natl Acad Sci U S A. 2017 Nov 14;114(46):12166-12171.

確認したいこと
先日紹介した記事で、ウェットでの分子スクリーニングの手法としてAlphaSeqが紹介されていましたので、原理の詳細について確認しました。
要旨
酵母ディスプレイシステムを使って、library-on-libraryのスクリーニングをハイスループットに実施する手法を紹介した論文です。
解説など
library-on-libraryというのは、分子A群、B群をそれぞれライブラリとして調製し、相互作用ペアを網羅的に同定する方法です。インタラクトーム解析や、標的抗原を探索しつつ薬としてそのバインダーを取得するような利用方法が考えられます。筆者らは、このスクリーニングを酵母ディスプレイシステムで実現させています。
酵母は、”mating”によって2倍体をつくる性質があります。もともと、MATa型とMATα型と呼ばれる2種類のハプロイド(1倍体)として存在する酵母が、MATa x MATαの組み合わせでのみ、それぞれが特異的にもつタンパク質どうしの相互作用を利用して接合することで2倍体をつくることができます。したがって、それぞれのハプロイドに、A群・B群の遺伝子を導入し、共存下で2倍体を形成した酵母の遺伝子を解析すれば、相互作用ペアを同定できる、というのが本手法の原理です。後に公開された文献では、この手法を”AlphaSeq”と呼んでいます。
本手法のメリットは以下の点にあると思います。
- 酵母という大規模なライブラリを扱えるディスプレイシステム
- 細胞外で相互作用検出が可能
10^10程度の大規模なライブラリを扱えることは、バインダーなどの人工的なタンパク質のスクリーニングに重要な要素です。また、細胞外でスクリーニングできることは、補因子やバッファーをコントロールしながら相互作用を検出できるため、とても有用と思います。
検証データの中では、相互作用の強さと2倍体の形成率に相関があるとのことで、ある程度厳密にaffinity selectionを行える可能性もあります。
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