論文タイトル
DNA writing technologies moving toward synthetic genomes
出典

要旨
DNA 合成の技術開発の歴史や現在地をレビューしたニュース記事です。
解説など
本日はニュースレター記事の解説です。トピックは合成ゲノム。汎用的な研究用途に利用される遺伝子合成技術についてではなく、生命そのものを作り出す全ゲノム合成についてです。
発端は 2016 年、クレイグベンターが完全合成されたゲノムから細胞を作成した研究にさかのぼります。彼らは、531 kb、473 個の遺伝子を含むゲノムで酵母を生成しました。そこでは、重複配列を含むDNA断片をアセンブリすることでゲノムを合成しています。
世の中ではゲノムを合成するための技術的な革新が連続的に起こっています。本記事では、以下のような流れでトピック立ててその過程を解説しています。
- 化学的合成手法の確立
- 生物学的(酵素反応を活用した)合成手法の確立
- ベンチトップ DNA 合成機の開発
まず、従来的な化学的な手法では、以下のような課題が顕在化していました。
- 有機溶媒への依存
- 高度に反復的な配列を合成できない
- プリン塩基が誤って除去される率が高く、最終分子の純度や収率が低下する
これらの課題を解決すべく、特に近年技術開発が盛んなのは、酵素による DNA 合成手法です。TdT という酵素を活用して、プログラム化された配列に従って塩基を付加する手法が開発されています。本手法を用いることで、1000 塩基程度のオリゴヌクレオチドを一度の合成反応で生成することができます。またアセンブリが難しい配列を合成することができることも特徴です。CMV プロモーターのように反復配列を含み、GC rich な配列を合成することが可能です。
酵素を用いた手法で DNA を合成するサービスを提供しているベンチャーは多数存在します。本記事では、代表的なサービス提供企業として、
- Ansa Biotechnologies
- Camera Bioscience
が紹介されています。
また世の中では、ベンチトップの合成機の開発も進んでいます。私が過去に把握していたのは、Telesis Bio (旧Codex DNA) の BioXP くらいでしたが、いつの間にか様々なベンチトップシンセサイザーが世の中に出回っています。
本文では、その技術革新に着目するのと同時に、潜在的に危険な配列を合成しないように制度面からの問いかけも発信しています。