論文タイトル
Programmable protein circuit design
出典
Cell. 2021 Apr 29;184(9):2284-2301.

Programmable protein circuit design - PubMed
A fundamental challenge in synthetic biology is to create molecular circuits that can program complex cellular functions. Because proteins can bind, cleave, and...
読んだ動機
細胞外からシグナルを受け取ることで、標的遺伝子の発現を誘導できる既存のシステムについて調査しました。細胞の機能強化や人工細胞の設計に有用な技術だと思っています。
要旨
遺伝子制御の人工回路デザインに関する総説です。
章立て
- イントロダクション
- 人工回路デザインの基本原理
- シグナルを受容するタンパク質デザイン例(細胞外・細胞内シグナル)
- シグナルを伝達するタンパク質デザイン例(直接型・間接型)
- 直接型:2分子のタンパク質間相互作用でシグナルが伝達
- 間接型:スキャフォールドを媒介してシグナルが伝達
- 論理回路の設計
- ロジック(動作原理、プロテアーゼ/リガンド競合による活性・不活性化など)
- アナログ/デジタル変換
- 回路の拡張性
- 動的(時間的)制御
- フィードバック制御
- 周期的制御
- 記憶制御
- 治療用途
- AND/OR/NOT回路による標的抗原特異的な活性化(CAR-Tなど)
- 細胞密度の制御
感想
細胞外のシグナルを細胞内に伝える分子システムとしては、Tango/MESA/SynN otch/GEMSの4種類について言及しています(Fig.2)。
- Tango : GPCR-転写因子と細胞内プロテアーゼの2分子が必要。リガンドはGPCRリガンド。
- MESA: ヘテロ2量化する受容体2分子が必要。リガンドは2量体誘導分子。
- SynNotch : Notch-転写因子の1分子が必要(その他内因性のNotch切断プロテアーゼが必要)。リガンドは標的抗原発現細胞。
- GEMS: ホモまたはヘテロ2量化する受容体が必要。受容体が活性化する内因性の転写因子を活性化。リガンドは2量体誘導分子。
必要な要素が少ないため、扱いやすいのはSynNotchかと思いました。
SynNotchの結合に応じて内因性のプロテアーゼがNotchの細胞内ドメインを切断することで、遊離した転写因子が核内へ移行し転写活性化できるようになります。この切断に必要なプロテアーゼはどの組織においても発現しているため、細胞種を選ぶ仕組みではなさそうです。
SynNotchがリガンドとして抗原発現細胞でなければならないのは、細胞の外向きに引っ張られる力がシグナル伝達に必要なためです。可溶型のリガンドを使用したい場合には、SynNotch以外の仕組みを利用しなければならないでしょう。
次に読みたい論文
SynNotchに着目して、この仕組みの現状の課題について確認してみたいと思いました。
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