論文タイトル
BindEnergyCraft: Casting Protein Structure Predictors as Energy-Based Models for Binder Design
出典
要旨
タンパク質バインダー設計における既存の「ipTM最適化」の限界を改善するために、構造予測モデル(AlphaFold2-Multimer)の信頼度出力をエネルギーベースモデル(EBM)として再解釈し、新しい最適化指標「pTMEnergy」を提案・検証した研究です。
解説など
タンパク質バインダーのデノボ設計では、AlphaFold2 の ipTM スコア(interface predicted TM-score)をスクリーニング指標に使用することが通例です。しかし ipTM は「統計的な複合体の尤度」ではなく、あくまでヒューリスティック指標です。また BindCraft のように最適化指標として ipTM を扱う場合は、スコア計算時にターゲット残基上で最大値を取るため、勾配がスパースになり、多くの残基ペアに信号が伝わらず最適化が局所的になりやすい傾向があります。
そこで本論文では、ipTM の代わりに AF2 が出力する pAE をスクリーニング指標として扱った手法を提案しました。pAE は残基ペアごとの構造的信頼度を確率分布として持っています。この pAE の logits を LogSumExp で集約してエネルギー関数として再解釈し、pTMEnergy という新たな最適化指標を導入しました。
筆者らは、さらに BindCraft の 最適化対象である ipTM をそのまま pTMEnergy に置き換えた設計フレームワーク BindEnergyCraft (BECraft) を開発しました。
この手法でバインダー設計の成功率をインシリコで評価しています。AlphaFold2 由来の Folding Model Constraints と Rosetta 由来の物理的 Constraints それぞれで、BindCraft や RFDiffusion を上回り、8ターゲット中7つで最高の成功率を達成することに成功しています。
コード公開はなされていませんが、BindCraft の次世代版として非常に期待が持てる結果です。


