論文タイトル
T-cell receptor specificity landscape revealed through de novo peptide design
出典
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要旨
T細胞受容体(TCR)がどのようなペプチドを認識できるかを構造ベースの機械学習モデル HERMES を用いて予測し、新規免疫原性ペプチドをデザインする研究です。
解説など
これまでに TCR-pMHC 結合を予測するモデルは数報存在しました。
- NetTCR(Jurtz et al., 2018; BMC Bioinformatics)
- 深層学習を用いて、配列ベースで TCR–ペプチド結合を分類予測。
- TULIP(2023, Cell Systems)
- TCR–ペプチド–MHC三者の相互作用を学習した Transformer 系列モデル。
- TAPIR(2023, Nature Biotechnology)
- 大規模な TCR–ペプチド反応データから、機械学習で TCR の反応性を予測。
また特定のTCRを指向するペプチドの設計方法としては、MHC提示に基づくデザインや、シミュレーションベース(MDやエネルギースコア)のデザインが良く知られています。
本論文で公開された新規手法 HERMES は、TCRが認識するペプチドの設計を「タンパク質構造ベースの機械学習モデル」で実現する手法です。
手法(HERMESモデル)
- HERMESは、タンパク質全体の立体構造データで訓練された 3D回転同変ニューラルネットワーク。
- 特定のペプチド残基をマスクし、周囲10Å以内の原子環境からその位置に適したアミノ酸分布を予測。
- ペプチドの「エネルギースコア」を計算し、TCR-MHC複合体での結合親和性やT細胞応答を推定。
- 入力データ
- 構造テンプレート(TCR–MHC–ペプチド複合体の構造(実験結晶構造 or AlphaFold3/TCRdockで予測したもの)
- 出力データ
- HERMESの出力は「その位置にどのアミノ酸が適合するかのエネルギー分布」。
- Ei(σ)(残基エネルギー)
- ペプチドエネルギー
- HERMESの出力は「その位置にどのアミノ酸が適合するかのエネルギー分布」。
- 2つのプロトコルを使用:
- HERMES-fixed:軽量・局所探索型
- WTペプチド構造を固定。
- 各残基を一つずつ「マスク」し、その位置に入り得る20種アミノ酸のスコア(確率分布)をHERMESで計算。
- これを繰り返して Position Weight Matrix (PWM) を構築。
- PWMに従ってサンプリングし、新しい配列を生成。
- HERMES-relaxed:広域探索・構造緩和型
- WTペプチドをランダム配列に置き換える。
- PyRosettaで「リパッキング+Relax」を行い、周囲の構造を調整。
- HERMESで各残基のアミノ酸分布を計算 → 新しい配列をサンプル。
- PyRosettaで再び緩和。
- MCMC基準(HERMESペプチドエネルギーの改善)で採択/棄却を繰り返す。
- 温度を徐々に下げるシミュレーテッドアニーリング方式で収束。
- HERMES-fixed:軽量・局所探索型
実際に本手法を用いて、T細胞を活性化するデノボペプチドを設計した事例が示されています。
コードはこちら。
GitHub - StatPhysBio/tcr_antigen_design
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