SynNotchのリガンド応答性能を改善

論文タイトル

Engineering of an enhanced synthetic Notch receptor by reducing ligand-independent activation

出典

Commun Biol. 2020 Mar 13;3(1):116. 

Engineering of an enhanced synthetic Notch receptor by reducing ligand-independent activation - PubMed
Notch signaling is highly conserved in most animals and plays critical roles during neurogenesis as well as embryonic development. Synthetic Notch-based systems...

読んだ動機

SynNotchシステムの課題を調べる過程で、SynNotchの分子デザインを改良している論文があったので内容を確認しました。

要旨

従来のSynNotchは高いリガンド非依存的な活性化 (ligand-independent activation, LIA)を示すことが知られていました。本論文ではNotchの分子最適化によりLIAの低減を達成しています。

  • 293T細胞にて一過的にSynNotchを発現させると、導入遺伝子量に応じてLIAの増加が確認された(Fig.1)
  • S3切断サイト(SynNotchがy-secretaseにより切断されるサイト)に変異を導入したり、Y-secretase阻害剤を投与するとLIAが低下したことから、y-secretaseによる切断がLIAの直接的な原因であることを確認した(Fig2a,b)
  • 野生型Notchに存在する細胞内ドメインの疎水性配列(QHGQLWF,RAM7と呼ぶ)を、SynNotchに付与するとLIAが低下することが判明した(Fig2c,d)
  • 抗原発現細胞や転写因子を変更することで一般化できるか検証した(Fig3)。

感想

y -secretaseは、Notchの膜貫通ドメインで高次構造化されたβシート構造を認識していること、この膜貫通ドメインの後ろに位置するRAM配列は、この構造を支持していることが知られています。これまでいずれの既存のSynNotchデザインにも、このRAM配列は使用されていなかったとのことです。

本論文によりLIAを低減できたとのことですが、抗原存在下での活性化レベルも低下していることが気になりました。リガント存在下・非存在下の fold increase も、利用するリガンド(抗原発現細胞)によっては、改善のみられないケースがあるようです。

次に読みたい論文

SynNotchのLIAにはまだ改良の余地がありそうです。Notchのシグナルメカニズムの詳細理解や、別のセンシングシステムについて考察していけたらと思います。

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