Notchのリガンド非依存的な活性化メカニズム

論文タイトル

The Role of Intracellular Trafficking of Notch Receptors in Ligand-Independent Notch Activation

出典

Biomolecules. 2021 Sep 16; 11 (9): 1369.

The Role of Intracellular Trafficking of Notch Receptors in Ligand-Independent Notch Activation - PubMed
Aberrant Notch signaling has been found in a broad range of human malignancies. Consequently, small molecule inhibitors and antibodies targeting Notch signaling...

読んだ動機

引き続き、SynNotchのリガンド非依存的な活性化(LIA)についてですが、LIAそのものの原因となるメカニズムやLIAの役割について総説した論文があったので確認しました。

要旨

遺伝子制御の人工回路デザインに関する総説です。

章立て

  1. イントロダクション
  2. Notchのシグナル伝達経路
  3. 一般的な膜タンパク質の細胞内輸送メカニズム
  4. Notch受容体のエンドソーム輸送
    1. Notch受容体のインターナライゼーション
    2. Notch受容体のリサイクリング
    3. 初期エンドソームヘの輸送
    4. エキソソームヘの分泌
    5. 後期エンドソームとライソソームヘの輸送
    6. 核移行
  5. がんにおけるNotchのLIA
  6. 哺乳細胞におけるLIAの生理的な役割
  7. NotchにおけるLIAの分子メカニズム
    1. Notch受容体の変異体解析
    2. Notch受容体のエンドソーム/ライソソーム輸送
    3. エンドソーム/ライソソーム間の環境変化
    4. 既存のメカニズムとは異なるS2切断
    5. 既存のメカニズムとは異なるS3切断
  8. Notch LIAシグナルを標的とした治療戦略
  9. 結言

感想

生理条件下でも野生型のNotchはLIAを示すとのこと。ショウジョウバエではHIF-aに応答して、マウスのT細胞では発生期のT細胞の形成時において、それぞれNotchのLIAが確認されています。ヒトの恒常的な環境下でLIAが起こるかは不明ですが気になるところです。

Notchのシグナル伝達にはNotch細胞外ドメインの糖鎖修飾が必要で、これながいとLIAも起こらないそうです。このことから糖鎖修飾はリガンド結合ではなく、切断移行のシグナル伝達メカニズムに関与しているのかもしれません。

Notchの切断に関しては、従来より知られたADAM10以外による影響を示唆されています。ADAM10を含むメタロプロテアーゼに対する阻害剤でもLIAを示すとのことです。

一方でエンドソーム融合はLIAにおいて必要なイベントだそうです。エンドソーム環境ではpHやカルシウムイオン濃度が変化しますので、これがLIAの誘導に寄与する可能性が示唆されています。

次に読みたい論文

ひとまず、NotchにおけるLIAの分子メカニズムについては、完全に解明されていないことと複数の要因が示唆されることから複雑なネットワークにより調整されていることが伺えました。よりシンプルなリガンド応答システムが作れないか、別のモダリティを探索してみるのも一案かと思っています。

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