論文タイトル
Selective use of ADAM10 and ADAM17 in activation of Notch1 signaling
出典
Mol Cell Biol. 2009 Nov;29(21):5679-95.

読んだ動機
前論文で引用されていたNotchのリガンド非依存的な活性化(LIA)メカニズムに関する一次情報を追ってみました。
要旨
Notchのリガンド依存的なシグナル伝達にはADAM10が必要で、一方でリガンド非依存的な活性化にはADAM17の寄与が重要であることを示した論文。
- NIH3T3, C2C12などのマウス株またはマウス胎児繊維芽細胞を用いた試験。Notch下流の転写活性をルシフェラーゼ活性を指標に検出している(CSLレポーターアッセイ)。
- ADAM10の不活化変異体やノックアウトによって、リガンド依存的なNotchシグナルは低下する(Fig.1)
- ADAM17を不活化しても部分的にリガンド依存的な活性は残る一方で、リガンド非依存的な活性化レベルは低下する(Fig.2)
- ADAM10はS2切断に関与するが、ADAM17は関与しない(Fig4,5)
- NotchのNRR領域にあるシステイン残基(C1675とC1682)をセリンに置換したバリアントにおいてLIAの強度が上昇した。このシグナルもADAM17の寄与が高いことが確認された。
図の解釈に必要な略称
- N1: Notch1
- DNKUZ: ADAM10のプロテアーゼ不活化バリアント
- Dll1HA/J1HA: HA tagged Notch ligand Delta-like 1/Jagged1
- SCR: scrambled control for siRNA
- BB94: metalloprotease inhibitor
- DAPT: y -secretase inhibitor
- MG132: proteasome inhibitor
感想
ADAM10以外にもNotchを切断・活性化するプロテアーゼが存在すること、それがLIAにも関与していることが示された論文。
ほとんどの試験がCSLアッセイのf old increaseで示されているため、Notch活性化の絶対量に対してADAM10/ADAM17の関与がどれくらい支配的なのかがわかりづらいですが、SynNotchにおけるLIAにもかかわることが強く示唆されます。
Resultsの後半では、ADAM17によるLIAに、Notch NRRの関与が言及されています。NRRはnegative regulatory regionの略称であり、Notchの細胞外ドメインに位置し、プロテアーゼ切断による活性化を生理条件下で防止する役割があります。
Discussionのなかで言及されていますが、NRR中のC1675とC1682の変異により、S2切断サイトの露出を防止するためのジスルフィド結合の形成が妨げられるとのことです。つまりSS非存在下では恒常的にS2サイトが露出し切断されることになります。
次に読みたい論文
NotchのLIA回避に向けたシグナル伝達メカニズムの理解のため、構造的な側面の知見が必要と感じました。LIAに関与する高次構造、アミノ酸残基、ADAM17等との複合体構造などの情報があればと思います。
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