【核移行】importin αの機能をレビュー

論文タイトル

Importin α : functions as a nuclear transport factor and beyond

出典

Proc Jpn Acad Ser B Phys Biol Sci. 2018;94(7):259-274.

確認したいこと

  • importinの核輸送メカニズム

リン酸化修飾によって機能する、NLSをデザインしたいと思っています。

要旨

タンパク質全般の核輸送メカニズムから、importin αの生理的な役割について詳述されたレビュー論文です。

章立て

  1. イントロダクション
  2. 核局在化シグナル
  3. 核輸送関連分子の発見
  4. 核輸送分子機構
    1. 核膜孔複合体
    2. 核輸送受容体
      1. importin α
      2. importin β
    3. Ran GTPase
  5. 古典的な核移行の分子メカニズム
  6. importin αの研究からわかったこと
    1. importin αの主要機能
    2. 哺乳類のimportin αにおける各サブタイプの生理学的意義
  7. importin αの予期せぬ機能
    1. 細胞質における機能
      1. importin βに対するアダプタータンパク以外の役割
      2. プロテアソームとの連携
      3. 紡錘体の形成
      4. ニューロンにおける逆行軸索輸送
      5. ストレス性顆粒
    2. 核内における機能
      1. 核膜孔における機能
      2. 核膜とラミン集合と核収縮
    3. 細胞膜における機能
      1. 膜型のimportin α
  8. 結言

考察など

importinとNLSに関する内容を中心に、理解を進めていきました。

まず、NLSは一般的に塩基性アミノ酸を中心に構成されています。これを古典的NLS(cNLS)と呼びます。

cNLSには、単一の塩基性クラスタをもつ単部型(monopartite)(例:SV40, PKKKRKV)と、2つの塩基性クラスタをもつ二部型(bipartite)(例:ヌクレオブラスミン、KRPAATKKGQAKKKK)の2種類が存在します。

一方、importin αはNLSを合むタンパク質とimportin βと3者複合体を形成して、核膜孔を通過します。

importin βは、核膜孔複合体と直接相互作用して、核内への効率的な移行に貢献します。

importinα は、importin β結合ドメイン(IBB)、cNLS結合ドメインであるアルマジロ(Arm)リピート、importin αの核外輸送に関わるCAS/CSE1Lに結合するC末端ドメイン、の3つで構成されます。

Armリピートは、10個の反復配列からなるドメインです。10個のうち、2-4個目の領域が主要NLS結合部位(major site)、6-8個目が補助的な結合部位(minor site)といわれています。NLSは主に「major site」に結合し、二部型のNLSは、その片側が「minor site」にも結合します。

また、importin αは、核膜孔複合体を構成するNup153と結合することで、核移行を補助することもできます。

タンパクのエンジニアリングにおいて、どうしてNLSが、importin αのIBBより使用されるのでしょうか。

私見ですが、ひとつには、NLSが比較的短いモチーフであるからだと思います。ちなみに、IBBは60残基程度の配列です。

ふたつめは、importin α自身も、核膜孔複合体と相互作用することで、核膜の通過に直接貢献する点です。これがどれくらいの寄与かわかりませんが、十分な核輸送にはimportin αが必須かもしれません。

タンパクによっては、cNLSを持たず、importinβ と直接結合することで核移行するタンパクもあります。求める活性レベルにより必要性の有無は変わるのでしょうか。

もちろん歴史的な経緯、使用実績がcNLSを利用する主要な理由であると思いますが、上記の点についても、頭の片隅に置いておきたいです。

追加調査したいこと

  • cNLSの配列多様性やコンセンサス配列
  • importin αサブタイプとArmリピートの多様性
  • cNLSとimportin αの複合体構造

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