論文タイトル
Molecular basis for specificity of nuclear import and prediction of nuclear localization
出典
Biochim Biophys Acta. 2011 Sep;1813(9):1562-77.

確認したいこと
- cNLS (古典的核局在化シグナル)のコンセンサス配列
- cNLSとimportin αの複合体構造
要旨
全般的な核移行メカニズムの解説から、タンパク質の核局在予測に関する深い内容へと展開される、レビュー論文です。
章立て
- 緒言
- 核移行経路と関連因子
- 古典的核移行経路
- cNLSはimportin αに認識される
- cNLS認識の構造情報
- 非定型なcNLS
- cNLSのリンカーとフランキング領域
- 天然タンパク質とimportin αの相互作用様式
- cNLSの特異性に関わる決定因子
- snurportin-1に制御される、スプライソソームタンパクの核移行
- importin βとの直接的な相互作用で制御される核移行
- importin αのIBBドメインによる、importin β認識
- snurportin-1のIBBドメインによる、importin β認識
- PTHrPによるimportin β認識
- SREBP-2によるimportin β認識
- 各タンパク質によるimportin β認識の共通点と相違点
- karyopherin-β2による核移行経路とPY-NLSs
- その他核移行経路
- 古典的核移行経路
- 核局在情報データベースと核局在を予測するツール
- 核局在データソース
- 核局在に関連したアノテーションを有する、包括的タンパク質データペース
- NLSデータベース
- 他の核局在関連データベース
- 核局在を予測する計算モデル
- タンパク質の類似性に基づく予測モデル
- NLS配列に基づく予測モデル
- 核局在/NLS予測手法の特徴
- マウスと酵母のプロテオーム解析データを用いた予測モデルの比較評価
- NLSのクラスや核移行経路の分類
- 核局在データソース
- 核局在データソースの現在の状況
- 結言
考察など
論文の前半は、全般的な核移行メカニズムについて解説で、特にimportin α、βが核局在タンパク質を認識する構造について、言及されています。
importin αは、核局在タンパク質のNLSと結合して、核への移行を促進します。
NLSと結合するのは、importin αのアルマジロ(Arm)リピートと呼ばれる領域です。Armリピートは、10個の反復配列で構成されています。しかし、それらが全体として、Hl/H2/H3の3つの、αヘリックスを形成します。NLSが結合するのは、その中でもH3ヘリックスに存在する溝です。つまり、各リピート配列がそれぞれNLSに結合できるわけではありません。
Fig.1では、Armリピートにおける、どの残基がNLSと相互作用しているか、具体的に示されています。
核局在タンパク質であるSV40TAgでは、N末端領域に存在するフランキング配列のリン酸化が、importin αとの親和性を強めることに寄与しています。これは翻訳後修飾(細胞内シグナル)依存的に、核移行が制御されていることを意味します。
論文の後半は、タンパク質の核局在に関わるデータベースや、核局在予測のツールについての話題になります。なじみの包括的なタンパクデータベースであるUniprotにも、核局在情報はアノテーションされています。既知のタンパク質に関する情報検索であれば、これらで十分役に立つと思います。
未知のタンパク質の局在予測、特にNLS予測モデルには、機械学習モデルが利用されているのが印象的でした。
cNLSは大別するとmonopartiteにおいて5つのクラス、bipartiteにおいて1つのクラスに、コンセンサス配列を分類できるそうです。
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