論文タイトル
Targeted AID-mediated mutagenesis (TAM) enables efficient genomic diversification in mammalian cells
出典
Nat Methods. 2016 Dec;13(12):1029-1035.

Targeted AID-mediated mutagenesis (TAM) enables efficient genomic diversification in mammalian cells - PubMed
A large number of genetic variants have been associated with human diseases. However, the lack of a genetic diversification approach has impeded our ability to ...
確認したいこと
- 分子進化の最新技術
『超生物学 次のX』を読んで、最新技術の中で、興味のある分野のレファレンスを確認してみたいと思いました。
要旨
- 超突然変異に関与するAIDを、部位指向的に作用させるため、dCas9との融合タンパクを用いた変異導入システム(TAM)を開発
- TAMを利用して、イマチニブ耐性に必要なABLキナーゼの変異を探索した
用語
- AID: activation-induced cytidine deaminase
- CRISPR: clustered regularly interspaced short palindromic repeats
- dCas9: nuclease-inactive CRISPR-associated protein 9
- sg: single guide
- AIDx: dCas9-AID-P182X
- TAM: targeted AID-mediated mutagenesis
解説など
AIDは、シチジンデアミナーゼと呼ばれる塩基変異酵素です。AIDによりシチジンがウリジンに変換されると、ウリジンが修復される過程で、A/T/G/C(GかCが多い)のいずれかになることで変異が導入されます。
dCas9はCRISPR/Casの改変体です。CRISPR/Casは、gRNAの塩基デザインに従って、DNAを部位特異的に認識し、そのエンドヌクレアーゼ活性により近傍の塩基を切断します。dCas9は、そのエンドヌクレアーゼ活性が失われた改変体ですので、純粋なDNA配列認識ドメインとして機能します。
TAMは、AIDとdCas9を融合したタンパクです。CRISPR/Casが配列特異的にdsDNAを切断するのに対して、TAMは、配列特異的に遺伝子変異を導入することができます。
AIDには、AID触媒ドメインに限定し、変異を追加した変異体(AIDx)を利用しています。
TAMの活性評価により、以下のような特徴があることがわかっています。
- GFPに終始コドンを挿入した遺伝子に、TAMで変異導入すると、4-5%のクローンがGFPの活性を回復する
- 変異導入は80%が、CまたはGを対象とする
- dCas9非存在下と比べて、変異導入効率が10倍以上増加する
- 挿入または欠失変異は、0.5%未満
- 野生型AIDの標的配列(Myc, Bcl6, PIM1遺伝子座など)には、変異を導入しない
- 導入変異箇所の周辺モチーフは、変異導入効率に依存しない(ホットスポットによるバイアスは軽減されている)
- プロトスペーサー中のシチジンを認識し、PAM配列の上流-12または-16bpで最も高い活性をもつ
追加調査したいこと
- TAMをタンパク質の分子進化に応用した事例
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