【分子進化】ニッカーゼ+DNAポリメラーゼを利用した変異導入技術

論文タイトル

CRISPR-guided DNA polymerases enable diversification of all nucleotides in a tunable window

出典

Nature. 2018 Aug;560(7717):248-252.

CRISPR-guided DNA polymerases enable diversification of all nucleotides in a tunable window - PubMed
The capacity to diversify genetic codes advances our ability to understand and engineer biological systems1,2. A method for continuously diversifying user-defin...

確認したいこと

引き続き、CRISPRを利用した分子進化技術についてです。

要旨

CRISPR-guided nickaseによる配列特異的なニックの生成と、DNAポリメラーゼによる塩基修復を組み合わせた、変異導入技術を開発しています。

用語

  • nCas9: nicking variant of Cas9
  • PolI3M: Escherichia coli DNA polymerase I harbouring the mutations D424A, I709A and A759R

解説など

筆者らは、開発したシステムをEvolvRと呼んでいます。これはnCas9とDNAポリメラーゼの融合タンパク質として、デザインされています。

nCas9は、CRISPR-Cas9にニッカーゼ活性を付与したバリアントです。sgRNAをもとに配列特異的にDNAを認識し、部位特異的にDNAにニックを形成します。

EvolvRにおいて、nCas9は、以下の変異が加えられています。

  • ニックの生成とDNAポリメラーゼによる塩基修復の反応回転を高めるために、nCas9のDNAとの解離速度を高めた変異(K848A, K1003A, R1060A)が導入された(→enCas9と命名)

ニック修復用のDNAポリメラーゼとして、大腸菌由来のポリメラーゼを利用しています。こちらも変異導入効率を高めるために、以下の変異が加えられています。

  • 校正精度を低下させるために、D424A、I709A、A759Rを導入した(→PolI3Mと命名)
  • ポリメラーゼの反応速度を高めるために、T7DNAポリメラーゼのチオレドキシン結合領域(TBD)を融合した

DNAポリメラーゼにさらなる変異を加えたり、コード領域のリボソーム結合サイトを除去するコドン最適化を行うなどの、改変も検討されていますが、最終的には採用されていません。

TAMやCRISPR-XなどのAID-dCas9に比べて、変異導入領域の範囲はさらに特異性が増しているようです。導入塩基のバイアスや、変異導入効率には課題がありそうに感じました。

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