論文タイトル
Cell-free translation systems for protein engineering
出典
FEBS J. 2006 Sep;273(18):4133-40.

確認したいこと
引き続き、無細胞タンパク質翻訳系の、構成要素や改良系について調査しました。
要旨
基本的な無細胞翻訳系の仕組みから、機能性タンパクや膜タンパクなど難度の高いタンパク発現への応用へと展開された、ミニレビューです。
用語
- PDI: redox-dependent chaperone protein disulfide isomerase
- SRP: signal recognition particle
- SR: SRP receptor
章立て
- 緒言
- 概要
- 機能性タンパク質の生産
- 膜タンパク質の生産
- 人工タンパク質の合成
- 結言
解説など
文量は短めですが、無細胞翻訳システムの中心を逸れず、きれいにまとめられた総説です。
粗抽出物を使用したタンパク質翻訳には、一般的に大腸菌、小麦胚芽、ウサギ網状赤血球のいずれかが由来となった抽出物が利用されます。その構成成分は、図1に示されています。
タンパク質の生産量は、以下の発現システムを用いることで、徐々に改善されてきました。
- 連続流路系
- 連続交換系
- 2層系
細胞抽出物に代わる手法としては、PUREに代表される、組み換えタンパクで構成された翻訳システムがあります。
高度な機能を示すタンパク質の活性を維持するためには、正しいタンパク構造の形成が欠かせません。無細胞翻訳系では、シャペロンによるフォールディング制御と、酸化還元反応によるジスルフィド制御が必要なケースがあります。
分子シャペロンには、DnaKシステム、トリガー因子、GroELシステムが存在します。このどれが、どのタンパク質のフォールディングに寄与するかは、ケースバイケースになります。
一方、ジスルフィド形成には、PDIやジスルフィドオキシドレダクターゼが用いられます。
膜タンパク質の無細胞翻訳には、リポソームや、water-in-oil が用いられます。
翻訳したタンパク質の膜への組み込みや、転座のためには、最低限SRP、SR、SecA が必要です。分泌型トランスロコン(Sec)は、膜への統合のためのチャネルとして機能します。この他、YidCを用いたSec非依存的な経路も存在します。SecトランスロコンやYidCのどちらか一方が、リポソームの脂質2重膜に取り込まれると、膜タンパク質の産生が促進されるとのことです。
コメント