【アンチエイジング】赤ワインに含まれるレスベラトロールのアンチエイジング効果

論文タイトル

Mechanisms of Aging and the Preventive Effects of Resveratrol on Age-Related Diseases

出典

Molecules. 2020 Oct 12;25(20):4649.

Mechanisms of Aging and the Preventive Effects of Resveratrol on Age-Related Diseases - PubMed
Aging gradually decreases cellular biological functions and increases the risk of age-related diseases. Cancer, type 2 diabetes mellitus, cardiovascular disease...

確認したいこと

レスベラトロールも、アンチエイジングに効果があると謳われている栄養素のひとつです。その分子メカニズムを中心に調査をしてみました。

要旨

レスベラトロールの分子生物学的な作用、疾患との関連性について概説したレビュー論文です。

章立て

  1. 緒言
  2. 老化の生物学的なメカニズム
    1. 加齢に伴うDNA損傷、突然変異、エピジェネティックな変化
    2. 加齢に伴う損傷または機能不全なタンパク質の蓄積
    3. 老化におけるエネルギー代謝、酸化ストレス、ミトコンドリアの機能
    4. 細胞の老化
  3. 加齢の進行を抑制するレスベラトロールの役割
    1. レスベラトロールの化学的性質
    2. レスベラトロールはSIRTsとAMPKを活性化する
    3. 加齢に伴う心血管・神経変性疾患に対するレスベラトロールの効果
    4. レスベラトロールの抗がん活性の作用機序
    5. レスベラトロールの臨床試験
  4. 結言とレスベラトロールの限界・今後の展望

解説など

レスベラトロールは、ブドウ、ココア、イチゴ、トマト、ピーナッツ、ホップ、クランベリー、サトウキビなどに含まれている成分です。ブドウに多く含まれていることから、ワインの健康への影響を考察する文脈で言及されることが多いと思います。その分子メカニズムから、近年はアンチエイジングとの関連性も示唆されており、注目される成分です。

分子メカニズムについて

レスベラトロールは、その構造からフェノール性の成分を有するため、水酸基に由来する抗酸化作用があります。

また、特定の生体内のタンパク質の疎水性ドメインと高親和性の相互作用を示すことがあります。現在までに約20種類のタンパク質と相互作用することが知られています。具体的には以下に挙げられるタンパク質が標的となります。

  • SIRT1
  • PDE
  • PKC
  • ERK

SIRT1(サーチュイン1)は、以前の記事でも言及した抗老化タンパク質です。

レスベラトロールは、SIRT1の活性を促すことで、DNAの損傷を防ぎ、恒常的なエネルギー代謝を維持します。また、PDEと相互作用して、cAMPやCa2+濃度を上昇することで、AMPKを活性化することができます。AMPKは、SIRT1の活性化を促すことでアンチエイジングに寄与するとともに、オートファジーも促進するため、神経変性疾患における変性タンパク質の蓄積を抑制することができます。

抗がん作用としては、ERKの活性化に寄与することで、がん細胞をアポトーシスに誘導することが示唆されています。しかしこの機序と効果は、がん種によって異なる可能性があるとのことです。

臨床試験について

まず、直接的に寿命延長が示唆されている臨床結果はありません。

疫学研究においては、レスベラトロールの食事摂取によって、特にアルツハイマー(AD)の発症率の低下について言及されている報告が目立ちます。いくつかの報告ではADのバイオマーカー(βアミロイド)レベルの低下が認められています。

がんについては、がん種によって有意差が示されない結果も多く、その効果を明確にしめすことができていない状況です。

一方で、ピペリンとの併用で血流が改善することが示されています。また、糖尿病患者に対しては、血中グルコース量やインスリン抵抗性の減少が示されているとのことです。

食事摂取による作用をヒトで明確に示すには、ハードルが高く時間もかかるため、分子メカニズムとの関連性からの推測が、レスベラトロールの期待の主要な根拠となっている状況です。用量依存的な作用が明確になることが望まれます。

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