論文タイトル
The Rosetta All-Atom Energy Function for Macromolecular Modeling and Design
出典
J Chem Theory Comput. 2017 Jun 13;13(6):3031-3048.

確認したいこと
Rosettaの使い方を学習できるコンテンツを作成したいと思い、Rosettaの仕組みについて勉強中。
要旨
Rosettaで使用されるエネルギー関数において参照される、各エネルギー項の算出式を主に解説した論文です。
解説など
タンパク質のモデリングやデザインにおいては、標的タンパク質の安定性を評価するために安定化エネルギーの算出が必要です。タンパク質のモデリング・デザインツールとして一般的なRosettaにおいても、その値を求めるエネルギー関数が用意されています。
本論文では、Rosettaで使用されるエネルギー関数について詳説しています。
エネルギー関数は、物理学的な現象と紐づく、様々なエネルギー項の線形結合で表されます。
E = ΣwiEi
Eiがエネルギー項(van der Waals相互作用、静電相互作用)、wiがそれぞれのEiにかかる重み因子です。したがって、各Eiの中身を知ることで、Rosettaで使用されるエネルギー関数を理解することができます。各エネルギー項は下記のリストのとおりです。本論文の前半の章・節も、こちらの順番に従っています。
原子間相互作用に基づくエネルギー項
- Erep: van der Waals 斥力相互作用
- Eatr: van der Waals 引力相互作用
- Efa_elec: 静電相互作用
- Efa_sol: 等方性の溶媒和(水分子が原子の周りに均一に分布していると仮定)
- Elk_ball_wtd: 違法性の溶媒和(極性原子の近くに存在する水の効果を特別視)
- Ehbond: 水素結合
- Edslf_fal3: ジスルフィド結合
主鎖・側鎖のねじれ角に基づくエネルギー項
- Erama_pre_pro: Ramachandran
- Ep_aa_pp: 主鎖デザイン
- Efa_dum: 側鎖の構造
特殊な状況下のねじれ角に基づくエネルギー項
- Eomega: ペプチド結合における2面角
- Epro_close: プロリン側鎖
- Eyhh_planarity: チロシン
理想的でない結合長・結合角に基づくエネルギー項
- Ecart_length: 結合長
- Ecart_angle: 結合角
- Ecart_torsion: ねじれ角
タンパク質デザイン時に必要なエネルギー項
- Eref: 非フォールディング状態のエネルギー
各エネルギー項は物理化学に基づくモデルをもとにしていますが、変数の変化による急激な値の増減を緩和するために、変数(原子間距離)の値をもとに、場合分けして、別々の関数が使用されているのが特徴的でした。
各エネルギー項にかかる重み因子の値は、経験的に算出されており、Nelder-Meadスキームを利用して最適化されているとのこと。Rosettaのデフォルトのエネルギー関数としては、REF2015が知られており、固有の重みが割り当てられています。
ロゼッタでは、エネルギーの単位として、Rosetta energy unit (REU)が用いられます。これは、Erama_pre_pro、Ep_aa_ppなど、統計的に算出されたポテンシャルエネルギーと物理学的に導出されたエネルギー項とを同列に扱う必要があるためです。実際には、検証の結果REUとkcal/molは、ほぼ一致するとのことですので、一つの指標として頭に入れておいた方がよいでしょう。
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