論文タイトル
Cyclic coordinate descent: A robotics algorithm for protein loop closure
出典
Protein Sci. 2003 May;12(5):963-72.

確認したいこと
以前にRosettaのツールをまとめたときに、ループ閉鎖法としてCCDが言及されていました。
本手法の詳細について確認しました。
要旨
タンパク質の構造予測時のループ閉鎖に、CCDを適用した手法を紹介した論文です。
用語
CCD: cyclic coordinate descent
解説など
タンパク質の構造予測における課題の一つに、ループ閉鎖があります。これは2つの構造ドメインの位置関係を壊さずに、ループ配列でドメインをつなぐ問題を指します。タンパク質は安定な構造ドメインが組み合わさって構成されるため、ドメイン間を担う領域の構造予測は困難さが増します。
原著で紹介されたループ閉鎖法より以前には、以下のような手法が存在しました。
- データベース法(van Blijmen and Karplus, 1997)
- ab initio法(Bruccoleri and Karplus, 1987)
- トリペプチド法(Wedmeyer and Scheraga, 1999)
- ランダム調整法(Shenkin, 1987)
- スケーリング緩和法(Fiser, 2000)
これらの手法は、精度や計算コストの観点から限界がありました。
筆者らは、ループ閉鎖法を解決する新しい手法を確立するために、ロボット工学で利用される”inverse kinetics”アルゴリズムを採用しました。これは物体成分を望みの配置にするための自由度に計算する手法です(”forward kinetics”は、これとは逆に、自由度に基づいて物体成分の位置を計算する手法になります)。この手法も、もともとは計算コストが高く、不安定な解を算出する可能性が高かったのですが、CCDという改良されたアルゴリズムが開発されたことにより、一躍有用な手法となりました。
CCDは、実装が容易で、概念的にも単純であり、計算も高速であることが特徴です。このCCDをループ閉鎖法に適用したのが本手法になります。ループ閉鎖への適用コンセプトを初めて報告した文献で、Rosettaへの実装については言及されていません。
ちなみに、この手法の欠点としては、以下の2つが指摘されています。
- ループの最初の残基に大きな変化が生じやすい
- 局所解に行き詰まることがある
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