【HSC移植】臨床医から見たHSCTの課題

論文タイトル

Allogeneic hematopoietic stem cell transplantation: lessons learned by a molecular immunologist/transplant patient

出典

Trends Immunol. 2022 Jun;43(6):459-465.

NCBI - WWW Error Blocked Diagnostic

確認したいこと

先日の記事と同じです。

要旨

アロのHSC移植に関する、臨床での知見をレビューした論文です。

章立て

  1. (緒言)
  2. レッスン1:ドナー登録における人種や民族間の格差
  3. レッスン2:臨床判断におけるデータの少なさ
  4. レッスン3:HSC移植のプロトコルや実績における継続的な改善
  5. レッスン4:免疫寛容とGVDのバランス
  6. 結言

解説など

本レビューは、アロのHSC移植に関するレビューです。臨床医視点から、これまでの教訓や今後の展望について解説されています。逆に分子生物学視点の解説はほぼありません。

細胞のレジストリにおける人種格差については、アロだから問題ないというわけでは当然ありません。HLA適合ドナーが一人見つかる確率は、白人で70%であるのに対し、アジア系では47%、アフリカ系は29%とのことです。この格差をなくすことは大きな社会課題といえます。

これまで継続的にHSC移植の改善に寄与していたのは、移植後に生じる合併症に対する薬剤サポートと、骨髄ではなく末梢血由来の幹細胞を使用していたことにあります。そういう意味ではHSC移植に特化した薬剤開発は少ないともいえます。

筆者らはHSC移植に関わる未解決の問題として、以下を挙げています。

  • GVHDを抑制しながら、移植片対腫瘍効果を高める方法
  • 血液疾患の進行を予測・予防する方法
  • HSC移植の前処置プロトコルの強化
  • 患者データに基づく重症度の予測手法の改善

現場での対応に焦点が置かれているため、これらの背景に潜むメカニズムの理解が、課題解決には重要そうです。

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