論文タイトル
Umbilical cord blood: an undervalued and underutilized resource in allogeneic hematopoietic stem cell transplant and novel cell therapy applications
出典
Curr Opin Hematol. 2022 Nov 1;29(6):317-326.
確認したいこと
と同じ。
要旨
臍帯血(UCB)を使用する造血幹細胞移植の特徴について言及したレビュー論文です。
用語
- UCB: umbilical cord blood
- CBT: cord blood transplantation
- NRM: non relapse mortality
- CBB: cord blood bank
章立て
- 緒言
- 同種移植のための造血幹細胞ソースの概要
- 同種移植における臍帯血造血幹細胞の特殊な免疫特性
- 同種移植におけるドナー造血幹細胞ソースとしての臍帯血の複雑性
- 臍帯血移植による高NRMに対する解決
- iPSバンク作製のための臍帯血
- 臍帯血移植における人種・民族多様性の重要性
- 他の革新的細胞療法のための臍帯血バンクの重要性
- 結言
解説など
筆者らは、UCBがその有用性にも関わらず、造血幹細胞移植に不当に用いられていないと、問題提起しています。HLAが適合する血縁者がいる場合は、それが第一選択となりますが、そのような候補者がいるケースは30%にすぎません。その次は非血縁のHLA適合ドナー、そしてその次が、ハプロタイプ一致の血縁者由来のHSCと非血縁UCBです。
本文では、このハプロ一致とUCBを用いた移植法について、長所・短所を列挙しています。
- ハプロ一致ドナーの長所
- HSCの細胞数確保が容易
- UCBの長所
- 長いテロメアを有し、DNA損傷が少なく、増殖能や造血再構成能が高い
- バンク化されている
またUCBは、他の幹細胞ソースと比べて特殊な免疫特性を持つそうです。ハプロ一致ドナーと比較して再発リスクが低下することが知られていますが、CD8+UCBの量が高いほど、骨髄への生着が速いとのことです。これはナイーブCD8+T細胞のプライミングが関与しています。
さらにCBTは、GVHDの発現率を低く抑えることができます。UCBには形質細胞様の樹状細胞(pDC)が多く、TNFαの発現量は低いことが知られています。また、ナイーブB細胞の回復の速さもGVHDの抑制に寄与しているそうです。
一方でUCBのリスクとしては、制御性T細胞の数が多いため、免疫再構築が遅れることがあり、感染性の合併症のリスクがあります。
免疫特性から少し離れると、UCB最大の懸念点はUCB内に存在するHSC数の少なさです。この対策には下記のとおりいくつかのアプローチがあります。
- ダブルユニットCBT
- ハプロ一致ドナーからのCD34+細胞をシングルユニットのUCBへ注入
- ハプロ一致ドナーからのPBをシングルユニットのUCBへ注入
- ex vivoで増殖させたUCB CD34+細胞を注入
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