【細胞治療】造血幹細胞移植 or CAR-T療法

論文タイトル

Chimeric Antigen Receptor T Cell Therapy versus Hematopoietic Stem Cell Transplantation: An Evolving Perspective

出典

Transplant Cell Ther. 2022 Nov;28(11):727-736.

Chimeric Antigen Receptor T Cell Therapy versus Hematopoietic Stem Cell Transplantation: An Evolving Perspective - PubMed
Cellular therapy modalities, including autologous (auto-) hematopoietic cell transplantation (HCT), allogeneic (allo-) HCT, and now chimeric antigen receptor (C...

確認したいこと

と同じ。

要旨

悪性血液がんに対する、造血幹細胞移植(自家・他家)とCAR-Tの位置づけを整理したレビュー論文です。

用語

  • HCT: hematopoietic stem cell transplantation
  • NHL: Non-Hodgkin lymphoma
  • LBCL: large B-cell lymphoma
  • MM: multiple myeloma
  • ALL: acute lymphocytic leukemia
  • BCMA: B cell maturation antigen

章立て

  1. 緒言
  2. 造血幹細胞移植とCART療法のレシピエント管理における比較
  3. 再発・難治性のリンパ腫の治療において、CAR-T療法が移植標準治療に及ぼす影響
    1. NHLにおけるCD19 CAR-T療法の最新と早期利用について
    2. LBCLにおけるセカンドラインにおけるCD19 CAR-T種の区別と限界
    3. 他家HCTかCD19 CAR-T療法を経験した化学療法感受性の患者の結果
    4. CAR-T療法の早期利用の可能性は、LBCLにおけるHCTの使用に疑問をもたらす
  4. B細胞成熟抗原CAR-T療法とHCT:補完と競合
    1. MMにおける他家HCRに関連する論争と考察
    2. B細胞成熟抗原ACR-T療法および他家HCTの臨床試験
    3. MMにおける他家HCTの代替または対照としてのBCMA CAR-T療法に関する臨床試験
    4. B細胞ALLにおける、最終治療もしくは他家HCTへの橋渡しとしての、CD19 CAR-T療法
  5. 結言と今後の方向性

解説など

まず各治療法の目標を説明すると、HCTは、骨髄破壊的な化学療法により悪性がん細胞に傷害を与えた後、レシピエントの造血機能を再構築するために幹細胞を移植する手法です。HCTには自家移植(auto-HCT)と他家移植(allo-HCT)が選択肢としてあり、auto-HCTはGVHDを低減できる一方で、allo-HCTはGVLの効果により化学療法に抵抗性のあるがん細胞に追加で傷害を与える作用が期待できます。

CAR-T療法は、がん抗原を認識できるキメラ抗原受容体(CAR)をT細胞に遺伝子導入した細胞をレシピエントに移入する手法で、抗原発現細胞特異的かつ化学療法抵抗性のがん細胞に効果がある療法です。

どちらも細胞移植療法であるものの、それが期待する効果が、造血機能の再構成か、直接的ながん細胞の殺傷かに大きな違いがあります。また、各治療法特有の毒性として、allo-HCTではGVHD、CAR-TではCRSや免疫細胞関連の神経毒性が挙げられます。

CAR-Tは近年開発された治療方法であるため、難治性の疾患に対してから順番に治療が適応されている実態もあり、HCTとCAR-T療法の標準治療としての棲み分けは、評価が進行中の段階です。

本レビューでは、様々な血液がん種に対して、それぞれの治療法に対するの既存の臨床試験結果に基づいて、現時点での位置づけを整理しています。上記の理由から本レビュー内で断定できる結論が導かれているわけではなく、技術的な側面からの課題や将来展望には言及していません。

現時点での、各がん種に対する標準治療の棲み分けは原著図1に示されていて、文字に起こすと以下の通りになります。

auto-HCT
  • PCNSL (primary CNS lymphoma)
allo-HCT
  • T-ALL (T cell acute lymphoblastic leukemia)
  • AML (acute myeloid leukemia)
  • MDS (myelodysplastic syndrome)
  • MF (myelofibrosis)
  • MPN (myeloproliferative neoplasm)
auto-HCT or allo-HCT

cHL (classical Hodgkin kymphoma)

PTCL (peripheral T cell lumphoma)

allo-HCT or CAR-T
  • B-ALL (B cell acute lumphoblastic leukemia)
auto-HCT or allo-HCT or CAR-T
  • FL (follicular lymphoma)
  • MCL (mantle cell lumphoma)
  • DLBCL (diffuse large B cell lumphoma)
  • MM (multiple myeloma)

この中でも本文献の中では、複数の治療法が選択肢となり得る以下のがん種に焦点を当てています。

  • aggressive NHL (LBCL)
  • MM
  • B-ALL

また、CAR-Tにおいては、複数の製品が存在しているため、それらの比較についても言及していました。

LBCLに対する再生医療等製品 (anti-CD19 CAR)
  • aci-cel (ZUMA-7)
  • tisa-cel (BELINDA)
  • liso-cel (TRANSFORM)
MMに対する再生医療等製品 (anti-BCMA CAR)
  • ide-cel
  • cilta-cel

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