論文タイトル
A Review of Clinical Outcomes of CAR T-Cell Therapies for B-Acute Lymphoblastic Leukemia
出典
Int J Mol Sci. 2021 Feb 21;22(4):2150.

確認したいこと
以下の記事と同じ。
要旨
B-ALLに対するCAR-T療法の臨床成績を解説したレビュー論文です。
章立て
- 緒言
- CAR-Tの構成要素
- CD19CAR-Tの臨床試験
- CAR-T以降の再発
- 今後の展開
- CD19 CAR-T:進行中の試験
- CD22 CAR-T
- 二重標的CAR-T
- 同種CAR-T
- CAR-T後の同種SCT
- 専門家の意見
- 結論
解説など
本文では臨床試験の結果から、CAR-T療法の課題や今後の展望を考察しています。
前回の記事でも述べたように、再発後の治療法にはいまだニーズがあります。長期無病生存(DFS)が得られるのは、成人患者の約40%、再発後の全生存率は7%です。CAR-Tは寛解率が他の治療法に比べて非常に高いため、再発後の治療法として非常に期待されています。
標準的な化学療法よりも、イノツズマブオゾガマイシン(抗CD22ADC)やブリナツモマブ(CD3/CD19 BiTE)の全生存期間が優位に延長しているとのことで、再発性B-ALLの治療にはこれらが有望であると考えられますが、最近のデータではCAR-T療法がこれらの新薬を大きく上回ることが期待されています。しかしその高い奏効率関わらず、患者の半数以上は再発を経験してしまうことが知られています。
ここからは、4つのトピックに分けて、CAR-Tの課題と解決策について本文の流れに沿って解説していきます。
CAR-Tの長期持続について
CAR-T療法後の再発は、CD19陰性とCD19陽性の2つに分類できます。実際には再発のほとんどがCD19陽性であることが知られています。CD19陽性の再発は、CAR-Tの効力が低下している、もしくはCAR-T細胞自体の消失が原因として考えられます。ちなみにTisa-celは、20ヶ月の長期にわたって体内で検出されたとの結果が報告されています。
このCAR-Tの持続性に対しては、CD19-B細胞数が少ないと、CD19CAR-Tの増殖や持続が不十分になるとの報告があることから、B細胞数に依存せずにCD19CAR-Tの持続性を増強するアプローチが一案となります。
抗原消失について
一方、CD19陰性の再発は、再発全体の10-20%であるとのことです。CAR-T細胞の増殖と持続が確認できる患者でCD19陰性の再発がみられるということからも、抗原消失を最小限に抑える必要性が窺えます。本文では、CD19/CD20またはCD19/CD22の二重特異性のCAR-T細胞に期待が寄せられています。
製造について
CAR-Tの作製方法も、薬効に大きな影響を及ぼします。まずセルソース自体の選抜について例を挙げると、事前に定められたCD4/CD8+T細胞比からなる均一なCD19CARを用いることで、抗腫瘍活性や副作用の忍容性が改善されたとの報告あります。
製造方法自体についても改良法が報告されています。Gracell Biotechnologiesは、FasTCARプラットフォームを利用することで、従来2週間かかって調製したCAR-Tを24時間で製造することに成功しました。このように作製されたCAR-Tは従来の手法で製造されたものと比べ、表現型が若く、vitroの培養で増殖能が高く、マウスモデルで抗腫瘍活性が高いことが示されています。
同種移植について
サイトカイン誘導キラー細胞(CIK)はALL患者において高い安全性プロファイルを有するT細胞集団です。この細胞を用いた同種のCARCIK-CD19は、GVHDも認められない一方で、高いCR率と長期のCAR-T持続を確認することができています。
また、UCART-22は、TALENによってTRAC及びCD52遺伝子を破壊した、抗CD22CAR-Tです。これらの遺伝子編集によりGVHDが軽減され、また抗CD52抗体を使用することでリンパ球を除去することが可能になります。
同じくPBCAR0191では、健常ドナーから採取した細胞のTRAC遺伝子座に、CD19CARを正確に挿入することでGVHDの軽減を試みています。
最終的に筆者らは、Allo-SCTによる地固め療法を行う方が長期的に改善する可能性があると考え、その橋渡しとしてのCAR-Tの有用性を主張しています。
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