論文タイトル
Dissecting Aging and Senescence-Current Concepts and Open Lessons
出典
Cells. 2019 Nov 15;8(11):1446.
確認したいこと
長寿(老化)に関連する信頼性の高いバイオマーカーを調査しました。
要旨
加齢と老化に関して体系的に解説されたレビュー論文です。
章立て
- 緒言
- 加齢と老化の概念
- 加齢はプログラムされているか
- 遺伝子マーカーとしての一塩基変異は、プログラム化された加齢を支持するか
- 老化-プログラムされたプロセス
- 加齢および老化に関する細胞複製、テロメア短縮、DNA完全性の役割
- 細胞老化と加齢における免疫系の役割
- 加齢と老化に共通する変化は、細胞特異的なセクレトームによって調整されているか
- 加齢と老化の状態
- 加齢及び老化のマーカー
- 老化細胞の加齢
- 加齢と老化の有益な機能
- 胎児の形成や組織の再生、修復
- 加齢の有益な効果
- 細胞老化と加齢におけるエピジェネティック機構
- 加齢と老化の可逆性
- 結論と展望
- 結論
- 展望
解説など
加齢(aging)と老化(senescence)は、厳密には異なる意味をもちます。加齢は単純に年を取ること、老化はカラダの機能が衰えることです。この2つの現象のメカニズムを理解すること、またそれらの程度を測る方法について、本文で言及しています。老化に関する重要なコンセプト(説)や、関連因子(バイオマーカーなど)には様々なものがありますが、きちんと分類・整理されて紹介されているので、初学者の理解がとても進む内容です。
老化の性質を説明するための理論は、これまでの歴史で様々なものが提唱されてきました。代表的なものを以下にリスト化します。
- 進化理論:突然変異の蓄積や逆行的多面的発現(成熟までは有利に、成熟後に不利に働く遺伝子)に基づく
- フリーラジカル理論:有害物質の蓄積に基づく
- プログラム化理論:老化は将来の世代の繁栄に利益をもたらす
- 機能亢進理論:遺伝子の持続的な亢進が細胞肥大を起こす
このような様々な説がある中で本論文では、老化現象が遺伝子の中にプログラム化されているかに焦点を当てて、メカニズムの説明を試みています。具体的に筆者らは、以下の原因仮説を列挙しています。
- 確率論的な原因に基づくアプローチ:経時的老化
- 疑似的にプログラム的な原因に基づくアプローチ:プログラム化されておらず、プログラム化できない、geroconversion
- プログラム的な原因に基づくアプローチ
- 確率論的かつ、プログラム的な原因に基づくアプローチ
確率的に蓄積する遺伝子変異や有害物質の影響に基づくか、遺伝子内にプログラムされた仕組みに基づいて老化するかで、メカニズムが大きく分類されていることがわかります。ここで「疑似的にプログラムされている」というのは、積極的に老化がプログラム化されているわけでなく、発生や成長のためにプログラムされた遺伝子が、成人期以降、その役割が不要になっているにもかかわらず、活性化し続けることが原因となる、という意味です。
細胞の老化は、”early”、”full”、”late” phase の3段階を経て進行するといわれています。各段階で起こるイベントは以下のとおりです。
- early:形態学的、機能的な変化
- full:SASPの分泌
- late:LINE-1、IFN-1の亢進
3章では、様々な加齢・老化のマーカーが紹介されていましたが、中でもp16Ink4aとSA-β-Galは代表的なマーカーであると述べられていました。
追加調査したいこと
老化のバイオマーカーp16Ink4aの役割について、詳細を確認してみたいと思います。
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