【AlphaFold】AF2が示す新しい相互作用様式、その名も”Ghost interactions”

論文タイトル

Ghost interactions: revealing missing protein-ligand interactions using AlphaFold predictions

出典

https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2023.10.18.561916v1

要旨

この研究では、AlphaFold2 (AF2) を利用して、動きが多い領域でのタンパク質とリガンド(小分子)との相互作用、いわゆる”幽霊相互作用”を明らかにしました。

解説など

タンパク質には、結晶構造解析で解くことができない “disordered region” が存在します。この領域は一般に進化的な保存性が低いといわれ、構造も不確実であるため、従来はその特徴を推し量ることが難しい領域でした。一方で、この領域は、リガンドの多機能性、触媒作用、アロステリズム、協同性などのいくつかの重要な生物学的プロセスと関連しているといわれています。

筆者らはAF2に、この無秩序領域に存在する”Ghost interactions” を予測できる能力があることを示しました。この名前は、結晶学的に導かれた構造の、欠損領域に関連する相互作用であることから名付けられています。

筆者らは、タンパク質の複合体構造のデータセットを用いて、AF2が高い予測精度で Ghost interactions を予測できることを示しています。具体的にはまず、Order-disorder transition regions (ODRs) を、5 個を超える連続した欠落残基を持つ、少なくとも 1 つの無秩序な領域を含む配座異性体として定義しました。そして、このODRs の予測パフォーマンスを評価しています。評価の結果から、AF2 のパフォーマンスは ODR 長にほぼ依存しないことがわかっています。

実際に、解析された Ghost interactions には、以下の特徴があることを確かめています。

  • リガンドと接触するタンパク質の規則的領域の残基と同様に保存され、また埋もれた領域に存在している
  • ゴースト相互作用はArg、Gln、Ser、Gly、およびAlaで富んでいる一方、Val、Met、Ile、Cys、Asn、およびAspでは減少している