論文タイトル
Accelerating protein design by scaling experimental characterization
出典
要旨
高速かつ低コストで多数のタンパク質を発現・精製・特性評価する新規プロトコルを提案した論文です。
解説など
David Baker ラボにおける設計タンパク質のハイスループットスクリーニングシステムの紹介です。自動化システムより、実験手順の効率化に焦点を当てており、アカデミアの実験規模にもフィットするアプローチであることが特徴です。
筆者らは下記に示す二つのワークフローを開発しています。どちらも大腸菌発現に基づく手法です。
1. SAPP(Semi-Automated Protein Production)
目的: 数百種類の設計タンパク質を並列かつ短時間で発現・精製・定量評価する。
主な特徴
- クローン単離・シーケンス確認を省略
Golden Gate AssemblyとccdBカセット(致死性遺伝子)を使い、バックグラウンドを抑制。DNA断片から直接大腸菌発現株を作製。 - SEC 精製の自動化
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)をマルチサンプラーで並列処理。分画・データ解析・プーリング・濃度正規化まで自動化。 - 性能
48時間以内に数百検体を処理可能(ベンチ作業時間は約6時間)。
コストは数本のDNAオリゴ相当、1プレート(96試料)あたり0.1–0.5 mgの精製タンパク質を得られる。
2. DMX(Demultiplexing Protocol for Oligo Pools)
目的: 安価なオリゴプールから配列確認済みクローンを大量に作製し、SAPP等で利用可能にする。
主な特徴
- 低コスト化
オリゴプール(合成DNA)を利用し、配列長非依存で数千種類の遺伝子を取得。 - 同時バーコード付与
4位置×24種類のUMIによる組み合わせで>33万通りのバーコード。
等温条件のGolden Gate Assemblyで熱循環器不要。 - 長鎖対応シーケンス
ナノポア長鎖シーケンスでバーコードと遺伝子を直接マッピング、長いGOIにも対応。 - スループット
1500設計配列の例で78%回収率(理論最大92%に近い)。
自動化機器あり/なし双方で実行可能。
使い分けとしては、大規模なデータ取得もしくは配列正確性を担保したいケースでは DMX を、予備試験や1次スクリーニング時に迅速にデータを取得したい目的において SAPP を活用するイメージです。DMX はクローナル遺伝子の合成コストを削減できることが大きな特徴で、~100-200くらいのスケールであれば SAPP を、それ以上では DMX を活用することが推奨されています。
オリゴプール遺伝子を使用した場合、通常はディスプレイスクリーニングを活用するのが自然ですが、あえてクローナルな高精度スクリーニングに適用している点は興味深いです。これは NGS による配列決定との相性を優先した判断でしょう。カバー率が低いため、事前にデザインの優先度が見積もることができる場合は、SAPP の方が望ましいと感じます。


