論文タイトル
Information-driven modeling of biomolecular complexes
出典
Curr Opin Struct Biol. 2021 Oct;70:70-77.
確認したいこと
グローバルドッキングを、実用に足る精度で実施するには、さらなる技術向上が必要であるという認識です。周辺知識を活用してドッキング精度を改善する手法について、確認してみたいと思いました。
要旨
実験データを活用してドッキングシミュレーションの精度を向上する手法について、概説したレビュー論文です。
章立て
- 緒言
- ドッキングソフトウェア抗体・抗原ドッキングの最近の進展
- 膜タンパク質への適応
- 進化的救済
- タンパク質形状情報の利用
- 結言
解説など
ドッキングの予測精度を改善するために、実験データを活用して予測に制限をかける手法が開発されています。本論文では、これまでに報告された関連手法の概要をまとめています。
High Ambiguity driven DOCKing (HADDOCK)は、数あるドッキング手法のなかでも、ウェットな実験から得られたデータをもとに拘束をかける予測手法として、実績のあるアルゴリズムです。本総説は、HADDOCKの開発ラボが記していますので、HADDOCKの事例紹介が多い印象です。
活用できる実験データのひとつとしては、リガンド・レセプター分子間の距離情報が挙げられます。両者が接触・近接している残基が限定されれば、取りうる複合体構造を制限することが可能です。
距離情報を取得する一般的な方法としては、以下が挙げられます。
- クロスリンクMS
- アミノ酸配列からの共進化予測
また、cryo-EMから取得された構造情報は、必ずしも原子レベルでアサインされていないケースもあります。その際はcryo-EMから得られたEMマップから導きだされた抗原の形状を、拘束条件に指定することも可能です。形状を利用した同様の解析はSAXSのデータを活用してもできます。HADDOCKは、EMマップ、SAXSの両方にに対応しています。
本論文では、抗体・抗原相互作用や、膜タンパク質が関連する相互作用にフォーカスしたドッキングシミュレーション事例についても紹介しています。抗体・抗原複合体の場合は、CDRをパラトープとして使用するケースが多いと思います。SnugDockはRosettaAntibodyツールと連携して、充実したUIや広範囲の解析メソッド(single domain antibodyへの適用、ループモデリングなど)を活用することが可能です。
追加調査したいこと
抗体・抗原相互作用については、複数のドッキングアルゴリズムの成績を比較した研究例が引用されていましたので、その詳細を確認してみたいと思いました。
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