【抗体デザイン】GearBind で高親和性抗体の改変探索

論文タイトル

Pretrainable Geometric Graph Neural Network for Antibody Affinity Maturation

出典

https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2023.08.10.552845v1

確認したいこと

深層学習を用いたタンパク質デザイン手法をベンチマークしています。

要旨

インシリコで抗体の親和性を増強する改変を予測するモデル GearBind の成績を評価した論文です。

解説など

インシリコで相互作用エネルギー (ΔΔG) を予測するアルゴリズムは数多く存在します。従来では分子動力学法(量子力学法)や経験的な力場を用いて算出する方法が存在していましたが、近年では、機械学習を活用した手法も現れています。本論文で紹介されている GearBind も深層学習を利用した ΔΔG を予測する手法の1つです。

本手法の特徴は、グラフニューラルネットワークを利用して、多面的に相互作用に関連する特徴量を捉えてモデル化している点にあります。

具体的には、タンパク質複合体の情報を、相補的な 3 つの異なるレベルで活用します。すなわち、正確な空間的および化学的特性を表す原子レベルの情報、原子の空間的配置を示す角度関係を捉えるエッジレベルの情報、および残基レベルの情報です。原子レベルの表現には、GearNet と呼ばれる GNN を利用しています。これが GearBind の名前の由来でしょう。

また、GearBind の手前には、事前学習モデルが用いられています。限られたセットの突然変異データでトレーニングすると、過剰適合や不十分な一般化が発生する可能性があるため、この問題を目的に事前学習モデルが活用されます。これは、PDB 内の大量の未標識タンパク質構造を利用して構築されています。

筆者らは、この GearBind の性能を他の ΔΔG 算出が可能な以下のモデルと比較して、その優位性を確認しています。

  • FoldX
  • Flex-ddG
  • Bind-ddG

また、抗 SARS-CoV-2 抗体である CR3022の親和性増強も試みていて、数個のデザインのウェットでの評価で、17 倍の親和性増強に成功しています。

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