【タンパク質構造解析】タンパク質構造の基本ユニットに迫る

論文タイトル

Basic units of protein structure, folding, and function

出典

Prog Biophys Mol Biol. 2017 Sep;128:85-99.

Basic units of protein structure, folding, and function - PubMed
Study of the hierarchy of domain structure with alternative sets of domains and analysis of discontinuous domains, consisting of remote segments of the polypept...

確認したいこと

任意のタンパク質構造をボトムアップにデザインすることが、ひとつの夢です。基本単位を積み上げることで、全体の構造を形づくることができると面白いと思いました。ブロックの最小単位に、どのようなユニットのレパートリーを用意すれば、望みの構造を作り上げることができるか、既報の知見を探してみました。

要旨

タンパク質構造の基本単位として、”閉鎖ループ(Closed loop)”構造に着目し、その役割や性質について解説しています。

用語

EFLs: elementary functional loops

章立て

  1. 緒言
  2. 閉鎖ループ構造の発見
  3. 閉鎖ループ構造とタンパク質の折りたたみ
  4. タンパク質の安定化における Van der Waals 相互作用の寄与
  5. 閉鎖ループ構造とタンパク質ドメインの階層
  6. 球状タンパク質における loop-n-lock構造と、タンパク質の折りたたみ
  7. 限定種類のアミノ酸で構成された人工タンパク質の事例
  8. 高密度環境でのタンパク質の折りたたみ
  9. 原始的な環状ペプチドから、基本ループ構造と高度化された酵素へ
  10. 結言

解説など

安定した球状のタンパク質やドメインは、130残基前後のアミノ酸で構成される頻度が高いことが知られています。さらにその球状構造には、25-30残基前後の閉鎖ループ構造が必要です。本レビューでは、この閉鎖ループ構造が、タンパク質の基本ユニットのひとつであると主張し、その役割や性質について解説しています。

この閉鎖ループ構造の存在は、遺伝子進化や、物理化学的な観点から、支持されることが様々な事例をもとに説明されています。

閉鎖ループの形成には、van deer Waals 相互作用が重要です。また、閉鎖ループ構造には loop-n-lock構造が存在していることが知られています。lock領域では疎水性コアを形成する一方で、loop headは極性アミノ酸をもとに親水性表面を形成します。

本論文では7章の内容に非常に興味を持ちました。本来20種類の天然アミノ酸から構成されるタンパク質の機能を、数種類に限定したアミノ酸でデザインしても達成できるか、という検討結果がまとめられています。

一般に、少ない種類のアミノ酸で構成された配列は、複雑な構造をとりにくいものです。しかしGuarneraらの報告によると、グルタミン、ロイシン、アルギニンからなる、80-100残基のライブラリーから、構造を有する分子を取得できたとのことです。これは、疎水性残基と親水性残基が適切な割合で存在していることが大きな理由であると考えられます。

また単純な配列から、2次構造パターンを形成できることも明らかとなっています。アラニン、スレオニン、グリシンを導入することによって、それぞれαヘリックス、βストランド、ターン構造の形成を促すことが述べられています。

テーマが多岐にわたり、その中で様々な検証結果が紹介されているため、そのひとつひとつを正しく理解するには難解な内容でした。周辺の知識を埋めた後で読んでみると、新たな発見がありそうです。

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