論文タイトル
Predicting protein structures with a multiplayer online game
出典
Nature. 2010 Aug 5;466(7307):756-60.

確認したいこと
- Folditのコンテンツ内容や、スコアリング関数の詳細について
要旨
タンパク質の正しいフォールディングを予想するオンラインゲームFolditの特徴や、プレイ履歴の解析結果などが紹介された論文です。
解説など
Folditは、タンパク質の正しいフォールディングを予想するオンラインゲームです。
ほどかれた構造を与えられたプレイヤーは、分子を部分的に引っ張ったり、回転させたりして構造を変化させることができます。動かすごとにその時点での安定化エネルギーを反映した値がリアルタイムで増減しますので、それを指標に安定な構造を探索していきます。
プレイヤーは日々投稿された問題を解き、優秀な成績を収めるとスコアを獲得できます。スコアはプレイヤーランクに反映されます。インフォマティクス関連のコンペティションのようにチーム単位でスコアを競うことも可能です。プレイヤー間はチャットやフォーラムを介してコミュニケーションすることができます。
本文では、プレイヤーが解いた構造と、Rosettaによる自動計算とで、解析に異なる傾向がみられたことが示されています。
具体的には、Folditプレイヤーは、タンパク質コア内に疎水性残基を埋没させることについて、特に熟逹していたとのことです。このような構造の改変にはストランドをスワップさせる工程が必要ですが、その操作は一時的にエネルギー的に不利な構造を経由するケースが多いです。プレイヤーは最終的なエネルギー最小化をイメージすることができたため、その選択が可能である一方で、Rosettaの自動計算では、エネルギー的に高い中間体は採用されない傾向があります。この差が結果に反映された可能性が高いと考えられます。
プレイヤー間で操作のクセが異なる(global wiggleを多用するプレイヤー、tweekを多用するプレイヤーなどが存在)ことも印象的です。チームで課題に取り組む場合、初期段階を専門とするプレイヤーや、終盤の最適化を得意とするプレイヤーに分かれて、分業がされているようです。
一方でプレイヤーは、完全にほどかれた初期構造から最終的な構造を予測することは、困難であるとも言及されています。目標が遠すぎるため、方針が定まらないのでしょう。
Folditで学習できるタンパク質構造に関わる基本原理や、スコアリングに使われている関数の詳細を確認したかったのですが、そこまでは解説されておらず。過去に一度プレイしたことがあるのですが、そのときの記憶が薄れてしまっているので、また手をつけてみようか検討中です。アカウント名だけから察するに、現在は日本人でアクテイプなプレイヤーは少ない印象でした。もしプレイヤーの方がおりましたら、ぜひ記事にコメントいただけますと幸いです。
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