論文タイトル
What method to use for protein-protein docking?
出典
Curr Opin Struct Biol. 2019 Apr;55:1-7.

確認したいこと
標的結合タンパク質のデザイン可能性を検証するために、最新のドッキング事例について確認しました
要旨
CASP-CAPRIの事例を中心に、タンパク質間相互作用を予測するドッキング手法の適応例と精度について紹介された総説です。
用語
- CASP:Critical Assessment of protein Structure Prediction
- CAPRI:Critical Assessment of PRediction of Interactions
- FFT:fast Fourier transform
章立て
- 緒言
- フリードッキング手法の最新のベンチマーク
- 最新のCAPRI結果に対するコメント
- テンプレートベースドッキングへのシフト:CASP-CAPRI検証事例
- ヘテロダイマータンパク質のテンプレートベースモデリング
- ドッキングへの付加情報の活用
- 結言
解説など
タンパク質間相互作用の予測は、CASPと同様にCAPRIと呼ばれるコンペティションによって最新手法が評価されます。本総説はCAPRIの解析結果を中心に、最新手法の到達点について言及しています。具体的には、以下の4つが解説ポイントとして挙げられています。
- フリードッキング手法
- テンプレートベースドッキング手法
- フリードッキングとテンプレートベースドッキングの組み合わせ
- 実験情報を活用したドッキング予測精度の向上
ドッキングには、モデリング同様にテンプレートベースのドッキング手法と、フリードッキング(鋳型構造を活用しない)手法が存在します。
まず、フリードッキング手法として代表的な、以下のアルゴリズムについて比較評価結果が示されています。
- ZDOCK (FFTベースの剛体ドッキング)
- pyDOCK (FFTベースの剛体ドッキング)
- SwarmDock (populationベースのミームアルゴリズムを利用した、柔体ドッキング)
- HADDOCK (実験情報・バイオインフォマティクスを活用した、半柔体ドッキング)
全体的な成功率は、上位1モデルで5-16%、上位10モデルで20-38%の予測精度であったとのことです。手法間の比較では、SwarmDockが最良で、ZDOCK、その他と続く形です。
これらの手法のうちZDOCK、pyDOCK、SwarmDockの3つと、SDOCKを加えて、統合的にスコアリングするスキーム IraPPA(Integrative Ranking of Protein-Protein Assemblies)と呼ばれる手法も登場しています。
本論文時点で最新のCAPRI 6th meetingにおいては、これらに加えて、Gueroisらが開発したInterEvDockが検証され、これが最良の成功率を示したとのことです。
機械学習を活用したスコアリング手法により予測を再ランク付けすると、上位1モデルにおける10%の予測精度が、20%以上に増加するという結果も得られています。
テンプレートベースの手法については、やはりテンプレートの質に依存するとのことで、ホモロジーの低いタンパクだと、かえってフリードッキングの方が優れていたという結果もあるようです。
最後に実験情報を活用して、予測精度を改善する方法についてですが、具体的には以下のデータを用いることで予測精度を向上することができます。
- 部位特異的変異体の解析結果
- クロスリンクMS
- SAXS
HADDOCKプラグラムでは、これらのデータを活用した解析手法が充実しています。総じて活用に値するレベルの予測精度を示す手法はなさそうな印象です。今後の発展に期待したいと思います。
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