論文タイトル
Functional antibody characterization via direct structural analysis and information-driven protein-protein docking
出典
Proteins. 2022 Apr;90(4):919-935.

確認したいこと
- Information-driven複合体予測手法の実施例
要旨
事前に同定された抗VEGFR2抗体(KD035)の抗原抗体複合体構造を、実験データと計算手法を組み合わせて予測した実施例が紹介されています。
解説など
実験データで得られたパラトープとエピトープの情報を拘束条件として、ドッキングシミュレーションを実施することで、複合体構造を予測しています。
パラトープ情報としては、以下のデータが活用されています。
- KD035とその親抗体の、アミノ酸配列比較
- KD035とその親抗体の、X線結晶構造解析から得られた立体構造比較
- KD035とその親抗体の、表面電荷パッチの違い
抗原側のエピトープ情報としては、以下のデータが活用されています。
- ヒトVEGFR2細胞外領域のドメイン欠損体に対する結合データ(ELISA)
- ヒトVEGFR2/マウスVEGFR2の相同性からの考察
KD035は、ヒトVEGFR2に結合するものの、マウスVEGFR2には結合しないことがわかっています。したがって、ヒトとマウスで配列に差異がある箇所がエピトープである可能性が高いことになります。
ドッキングには構造分析ツールのMOEを使用しています。高速フーリエ変換によるサンプリングから粗視モデルで初期探索を行った後、側鎖のパッキングなどのリファインメントすることでモデルが生成されます。
生成された最上位のモデルは、その他のモデルに比べて、特にエネルギー的に優位であったとのことです。また、変異導入試験やMDシミュレーションの結果から、このモデルが確からしいことが示されています。
この実施例も、先日紹介した文献に引き続き、総合的な判断でエピトープを定義する方法でした。
変異体解析のデータは結合の増減量が部分的なケースも多いため、拘束条件に含めるか否かの判断には課題が残るように感じています。
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