論文タイトル
Dietary protein intake and human health
出典
Food Funct. 2016 Mar;7(3):1251-65.

確認したいこと
以前の記事に引き続き、タンパク質(アミノ酸)の摂取における、健康への影響について調査してみました。
要旨
食事におけるタンパク質成分の役割と、最適な摂取量についてまとめているレビュー論文です。
章立て
- 緒言
- ヒトにおける食事でのアミノ酸摂取必要量の研究
- 1900年代初期の研究
- 1940-2010年代の研究
- アミノ酸必要量を決定する方法
- 一般的な知見
- 窒素バランス法
- 要因加算法
- トレース法
- Nバランス法や同位体法において見落としがちなこと
- ヒトにおけるアミノ酸必要量
- 一般的な知見
- 最低減の運動における健康的なヒト
- 中・高強度の運動における健康的なヒト
- 体重減少プログラムを実施中の肥満性のヒト
- 食事の頻度
- タンパク質の品質
- 植物性よりも栄養価が高い動物性タンパク質
- 動物性たんぱく質の様々な栄養素
- 動物性と植物性タンパク質の適切な比率
- タンパク質欠乏症と動物性タンパク質摂取による改善
- タンパク質欠乏症の世界的な傾向
- タンパク質欠乏による健康への影響
- タンパク質欠乏を防ぐ手段
- タンパク質摂取の安全な上限量
- 一般的な知見
- 幼児や子供における上限値
- 成人における上限値
- 高いタンパク質の摂取量における副作用への懸念
- 一般的な知見
- 消化系、腎臓、心臓血管系への影響
- 骨量への影響
- がんと糖尿病への影響
- 結言
解説など
タンパク質は、その構成要素であるアミノ酸の供給源となります。特に体内で生産ができない必須アミノ酸は外から摂取する必要があり、その最適な摂取量を推測する分析法が求められてきました。
本論文で紹介された、最適なタンパク質摂取量を求める手法は以下の通りです。
- 窒素バランス法 (N balance study)
- 要因加算法 (factorial method)
- 直接アミノ酸酸化法 (direct AA oxidation method)
- 間接アミノ酸酸化法 (indirect AA oxidation method)
窒素バランス法は、排泄量から推定する方法であり、酸化法は、同位体標識されたアミノ酸の酸化状態から推定する方法です。その特徴から、酸化法は長期の滞在を必要とせずに推定することができます。
タンパク質摂取の推奨値は、体重や年齢、普段の運動量によって変わってきます。
IOM (Institute of Medicine)が提唱する必要量に基づくと、下記の通りとなります。
- 生まれたての赤ちゃん (0.3-0.5歳):1.52 g/ kg body weight / day
- 子供 (1-3歳):1.10 g/ kg body weight / day
- 成人 (19歳以上):0.80 g/ kg body weight / day
タンパク質の供給源として食材を捉えた場合は、植物性に比べて動物性のタンパク質の方が高栄養価といわれています。動物性たんぱく質の特徴は下記の通りです。
- アミノ酸の含有比率が高い
- ミネラル成分が豊富
- 植物性タンパク質(小麦粉や米)に比べて炭水化物の割合が低い
- タウリンやカルノシンを含む
当然摂取量の上限値も設定されています。健康な成人では、1日あたり2g/kg body weightのタンパク質であれば許容することができるといわれています。
タンパク質を摂取しすぎると、タンパク質の酸化を通じて、アンモニア、一酸化窒素、ホモシステイン、硫酸塩などが生成されます。アンモニアは腎臓を通じて、尿素として排出されます。また一酸化窒素は血流と糸球体ろ過量を増加させます。これらの作用を通じて、タンパク質の過剰摂取は腎臓の負担を高めることが知られています。
また、タンパク質の過剰摂取は、カルシウムの尿中排泄を刺激することから、骨粗しょう症の一因となる可能性もあります。
赤身肉・加工肉の健康への影響は昨今話題になっています。主に発がんリスクと、飽和脂肪酸による心疾患への影響が懸念されています。本論文ではがんリスクに関するエビデンスが少ないため、今後も変わらずタンパク質の主要な供給源として期待しているというスタンスです。一般的には魚由来のタンパク質が推奨されることが多いと思います。それぞれの良し悪しを考慮して、バランス良く摂取するのが望ましいでしょう。
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