論文タイトル
Improvements to robotics-inspired conformational sampling in rosetta
出典
PLoS One. 2013 May 21;8(5):e63090.

確認したいこと
先日の記事で紹介した、KICの続報を勉強してみました。
要旨
ループモデリングに利用されるKICを改良し、構造予測精度を改善した次世代KIC (NGK) について紹介した論文です。
用語
- KIC: kinetics closure
- NGK: next-generation KIC
解説など
最安定な構造を探索するための、構造サンプリング過程には、以下3つのステップが存在します。
- 広大な立体配座空間を効率的に探索する
- エネルギーランドスケープを天然に近い最小値まで下る
- 極小値間のエネルギー障壁を渡る
これら3つを解決するための戦略を、多様化(diversification)、強化(intensification)、アニーリング(annealing)と呼んでいます。
多様化戦略は、探索する立体配座空間の範囲を広げることで、最安定な構造をエネルギーランドスケープレベルで同定することです。強化戦略は、選定したエネルギーランドスペースを効率的に下っていくためのサンプリング手法です。最後のアニーリング戦略は、エネルギーランドスケープを一時的に平滑化することで、障壁を下げる方法になります。
これら3つの戦略をKICに対して適応することで、予測精度を改善できるか検証したのが本論文です。筆者らはまず、多様化戦略のためにタブーサンプリングという手法を採用しています。これは、以前に選択された立体配座を記録して、それとは異なる領域をサンプリングを促す手法です。
強化戦略としては、近接するφ/ψの組み合わせ、またはω角をサンプリングする手法の適用を試みました。これらはそれぞれRama2bサンプリングと、Omegaサンプリングと呼ばれます。
最後にアニーリング法として、Rosettaのエネルギー関数におけるエネルギー項の重みを徐々に傾斜する手法(Ramp repulsiveサンプリングまたはRamp ramaサンプリング)を適用しています。
これらを従来のKIC手法と、以下の評価指標で比較しました。
- RMSD
- <1Å以下モデルの中央値
評価のためのベンチマークセットとして、45種類の12残基のタンパク質セグメントを用いています。
結果として、タブーサンプリングを除く手法は、それぞれを組み合わせることで従来のKICに比べて優れた予測精度を示していました。この組み合わせ法を次世代KIC(NGK)と呼んでいます。
NGKでも予測精度が優れない構造があるのですが、これは、エネルギー関数の精度が不十分であるためであると考えられるとのことです。本検証によりサンプリング手法が改善されたため、エネルギー関数の改善が次のボトルネックとなっていることを表しています。
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