論文タイトル
Antibody based conditioning for allogeneic hematopoietic stem cell transplantation
出典
Front Immunol. 2022 Oct 20;13:1031334.

確認したいこと
自己複製する治療用の人工細胞を作ることが、私の個人的な課題の一つなのですが、最近は内部で機能するタンパク質のエンジニアリングにフォーカスしてばかり。久しぶりに、既存課題の確認と最新情報のキャッチアップをしていけたらと思います。本ブログでもほとんど取り上げていないトピックですので、基本的な内容から公開していきたいです。
要旨
造血幹細胞移植の前処理に使用される、抗体療法について紹介されたレビュー論文です。
用語
- HSCT: hematopoietic stem cell transplantation
章立て
- 緒言
- アロHSCTのための、未標識抗体によるドナー細胞の除去
- 幹細胞移植のコンディショニングのための、放射性同位体ラベル化抗体
- 幹細胞移植のコンディショニングのための、抗体薬物複合体
- 結言
解説など
HSCTは血液がんや、再生不良性貧血・自己免疫疾患などの非悪性の血液疾患で適応される治療法です。レシピエント(移植先)の細胞を除去し、新しいドナー(提供側)の血液細胞を移植することで、正常な造血機能を再構築するための治療になります。ドナーのHSCがレシピエントにきちんと生着するには、以下の2つを克服する必要があります。
- ドナーのHSCが生着できる環境(ニッチ)スペースを空けるため、レシピエントのHSCを事前に排除する
- レシピエントによる免疫拒絶を回避する
上記の課題を解決するための移植前処置には、従来高用量の放射療法や化学療法が用いられましたが、この処置には、組織非特異的な傷害やGVHD(移植片対宿主病)を発症する恐れがあります。
本論文では、骨髄非破壊的なHSCTの前処理方法として、抗体を用いたコンディショニング法をレビューしています。
章立てどおり、HSCT前処理のための抗体療法には、
- 未標識抗体
- 放射性同位体標識抗体
- 抗体薬物複合体
の3種類があります。また、抗体がそれぞれが特異的に結合する抗原には選択肢が複数あり、放射性同位体や抗体薬物複合体には、ペイロードされた分子に様々な種類があります。この総説では、下記でリスト化した抗体群について、主にその前臨床での効果を紹介していました。
未標識抗体
- 抗CD45(c-kit)抗体
- 抗CD47抗体
- 抗CD4抗体+抗CD8抗体
- 抗CD117抗体
- 抗CD122抗体
放射性同位体標識抗体
- 抗CD45抗体-131I
- 抗CD45抗体-211At
- 抗CD45抗体-90Y
- 抗CD213抗体-213Bi
抗体薬物複合体
- 抗CD45抗体-SAP
- 抗CD45抗体-テシリン
- 抗CD117抗体-SAP
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