【酵素デザイン】デノボデザインした酵素を計算化学でリデザインする方法

論文タイトル

Design of efficient artificial enzymes using crystallographically-enhanced conformational sampling

出典

https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2023.11.01.564846v1

要旨

酵素をインシリコで改変デザインした事例を紹介した論文です。

解説など

本論文では、デノボでデザインされた酵素に対して、機能の増強改変をデザインする手法の紹介です。

従来は、実験的な指向進化が活用されていた酵素のデザイン。この論文で紹介された手法のベンチマークとしては、このようなウェットスクリーニングのみが言及されていますが、先日の記事で紹介した手法を含めて、近年ではインシリコでデザインする手法も散見されます。

このような技術がある中で、本手法の特徴は、構造モデルからだけではなく、結晶構造解析時の X 線回折データを活用して分子デザインを行っている点にあります。筆者らは、一般的な構造モデルだけでは、タンパク質の動的な性質を考慮することができませんので、酵素機能を設計することは困難である、と仮定しています。一方で、開設データと計算された電子密度マップは、数十億の分子を含む結晶から取得できる情報で、多様な立体構造状態をサンプリングしているため、そこから得られるアンサンブルモデルは、標的タンパク質のフォールドの平衡状態を表すことができると期待されます。

このような仮説に基づいて、筆者らは次のようなデザイン手順を検討しました。

  • 標的タンパク質の結晶構造から、バックボーン構造のアンサンブルを生成
  • 隣接する残基と側鎖構造を最適化
  • 以下の構造指標でデザインをフィルタリング
  • 活性部位の最適なジオメトリに最適な角度で最も安定したデザインをテンプレートとして選抜
  • 遷移状態において、溶媒露出領域が埋め込まれているデザインを選抜
  • 活性部位の70%が事前に組織化されていると予測されるデザインを選抜
  • MDシミュレーションで、触媒活性のある立体構造要素を含むデザインを選抜

筆者らは、このデザイン手法をケンプエリミナーゼ (HG3) という酵素に対して適用しました。結果として、7ラウンドの指向性進化試験によって得られたデザインに匹敵する、活性を示すたんぱく質を生成できたとのことです。

本論文では、酵素に対して応用されていますが、switchable な機能をもつタンパク質デザイン全般に応用できる手法であると感じました。一方で、end-to-end な手法ではなく、かなり経験に依存したデザイン事例である印象です。

読むべき論文

酵素のデノボデザイン事例として、以下の論文が引用されています。

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New algorithms and an in silico benchmark for computational enzyme design - PubMed
The creation of novel enzymes capable of catalyzing any desired chemical reaction is a grand challenge for computational protein design. Here we describe two ne...