【タンパク質デザイン】サイトカイン受容体の機能阻害が可能な膜貫通ドメインをデノボデザイン

論文タイトル

De novo-designed transmembrane proteins bind and regulate a cytokine receptor

出典

De novo-designed transmembrane proteins bind and regulate a cytokine receptor - Nature Chemical Biology
The study demonstrates that specific recognition and custom binding geometries can be computationally encoded between protein spans within lipids through design...

要旨

エリスロポエチン受容体の膜貫通ドメインに結合するタンパク質を、デノボデザインしたレポートです。

解説など

受容体タンパク質のデノボデザイン事例になります。サイトカイン受容体は膜タンパク質間のオリゴマー化によって、細胞内にシグナルを伝播するので、天然の受容体の膜貫通 (TM) ドメインに結合するタンパク質フラグメントがデザインできれば、天然受容体の相互作用を阻害できる可能性があります。これまでに TM ドメインバインダーのデザイン事例はいくつかありますが、機能阻害はできなかったり、単純なトポロジーである type I 受容体での実施例のみにとどまっていたのが現状です。

筆者らは、過去に TM ドメインのデノボデザインを初めて実証した CHAMP アルゴリズムを開発した過去があり、これをエリスロポエチン受容体の機能阻害に適応した事例が本論文になります。

デザインスキームは下記の通りになります。

  1. EpoR の TMドメインをモデリング。
  2. EpoRに結合するポリアラニンの骨格構造モデルをデザイン。CHAMPを活用し、天然のTMモチーフをデータマイニングして、構造インフォマティクス的なアプローチで構造を生成しています。
  3. RosettaMP で側鎖のパッキングを生成。
    • デザインタンパク質の13残基がヘリックス間相互作用に関与
      • うち small-X6-small ポジションの4残基は、Gly, Ser, Alaをアサイン
      • 残りは、疎水性が高く、脂質指向性があるGly, Ala, Thr, Ser, Val, Leu, Ile,, Phe, Metをアサイン
    • 脂質側に向いているその他の残基は、Ile, Leu, Val, Pheをランダムにアサイン
  4. デザインをインシリコでスクリーニング。
    • Rosettaから算出できる相互作用エネルギーは不正確なので利用しない
    • パッキングボイドがないことを基準に、Rosetta’s PackStat スコアでトップ 10% のデザインを選抜

最終的に、CHAMP-1とCHAMP-2という2種類のデザインをウェットでの評価に回しており、きちんと EpoR の機能阻害が見えていることを確認しています。デザインタンパクは、その一部が細胞膜上でホモダイマーを形成するようですが、mEpoR/CHAMPのヘテロダイマーとしての存在率が最も高いとのことです。

本手法の開発を引き金に、受容体機能をもつタンパク質のデノボデザインも将来的にできることが期待されます。