論文タイトル
Diffusing protein binders to intrinsically disordered proteins
出典

要旨
タンパク質の非構造化領域に結合するバインダーを計算機で設計できることを示した論文です。
用語
IDPs: intrinsically disordered proteins
解説など
RFDiffusion を利用して、デノボで IDPs に結合するバインダーデザインに成功したことを報告した論文です。
この目的のために、彼らが実装したパイプラインやデザイン戦略として、大きく次の2点があります。
- 標的抗原のディスオーダー領域にかかわる入力情報に配列のみを利用(構造は不要)
- バインダーの2次構造にストランドを指定
まず1点目に関しては、相互作用する2つの鎖(標的とデザインタンパク質)に対して、標的抗原は配列情報のみを入力情報として与えて、もう一方のバインダーの分子構造をデノイジングして生成するアプローチを採用しています。この手法は、RFDiffusion に実装された”Partial diffusion”を活用することで実行することができます。実施例において、配列設計やデザインのフィルタリングには、既報のとおりProteinMPNN / AlphaFold を利用しています。
実際に公開された trajectory をみると、標的ペプチド表面を包むようにデザインバインダーが生成されていることが分かります。実施例の経験に基づくと、相互作用界面間の水素結合が多いほど、デザインのヒットレートが高まるとのことで、デザインのフィルタリング指標の1つとして有効であることが示されています。
また、既報の報告から IDP に結合する分子は、ストランド構造をもつことが知られています。したがって、デザインの2次構造についてストランドにバイアスをかけることで、バインダーのヒットレートが上がるかどうか検証しています。
G3BP1のIDPを例に、何の制約もなくデザインすると、
helix : strand : loop → 5.7 : 3.8 : 0.5
であるのに対し、ストランド構造に制約を加えると、
helix : strand : loop → 0.54 : 8.9 : 0.6
に改善します。これにより、インシリコスクリーニングでフィルタリングを通過するデザイン数が25/10,000→1,192/10,000まで改善しました。
disorderd region に結合できるということは、受容体の ICD、特にシグナル伝達に関与する配列モチーフにも結合可能になりますので、合成生物学への幅広い応用が期待されます。
実装は、既存のコードで参照可能ですので、ぜひお試しください。
An example of partial diffusion with providing sequence in diffused regions can be found in ./examples/design_partialdiffusion_withseq.sh. The same example specifying multiple sequence ranges can be found in ./examples/design_partialdiffusion_multipleseq.sh.