【AlphaFold】柔軟性の高い “disordered”領域の相互作用を解析するコツ

論文タイトル

From interaction networks to interfaces, scanning intrinsically disordered regions using AlphaFold2

出典

From interaction networks to interfaces, scanning intrinsically disordered regions using AlphaFold2 - Nature Communications
Here, the authors show that AlphaFold2 accurately predicts protein interfaces involving disordered regions. Combining different delimitations and sequence align...

要旨

intrinsically disordered region に関する相互作用を、AlphaFold2 を使って解析する手法を紹介した論文です。

解説など

本論文では、AlphaFold で intrinsically disorderd regions (IDRs) やその相互作用に関わる解析精度を改善するための方法に言及しています。一般に IDRs は構造の柔軟性が大きく、球状でリジッドな構造のタンパク質と比べるとその予測精度が低いことが知られています。それでもなお、そのリニアな配列的な特徴を利用して、特定のパートナータンパク質と特異的に相互作用することができ、生体機能に重要な役割を果たしています。

これまで、IDRs やタンパク質-ペプチド複合体の構造解析を、AlphaFoldで実施するうえでは、下記のような手法でその予測精度の改善が試みられてきました。

  • MSAのサブサンプリング
  • paired MSAの活用
  • in silico mutagenesis
  • InterPepScore

このような背景がある中で、筆者らは別の視点から IDRs の構造予測精度を改善する方法を提案しています。それは、標的タンパク質の配列をフラグメント化し解析対象領域を短くすることです。AlphaFold で複合体構造を予測する際に入力するタンパク質鎖長が、2ペア合計で1500残基を超えると、大きく解析精度が下がることが知られています。一方で、IDRs の構造やその相互作用は、周辺の配列の影響をほぼ受けずに独立して機能しますので、無関係なドメイン由来の進化情報は無視することで、その構造予測精度を改善することができるとのことです。

IDRs の相互作用をスクリーニングする用途では、エピトープが未知であることが多いため、解析対象領域を限定することは偽陰性の原因となり、本手法には一定のトレードオフが存在します。実際にフラグメント長を+100, 200と伸ばしていくと、その分予測精度が落ちていくとのことです。