論文タイトル
Origins of Life: The Protein Folding Problem all over again?
出典
要旨
生命の起源において、タンパク質がどのように機能を獲得していったかを Foldcat メカニズム を用いて説明した文献です。
解説など
生命の起源は RNA から始まったという説が広く浸透しています。この説は RNA が 、
- 情報を保持するのに強固な構造を持つこと
- 一部の RNA に酵素機能が備わっていること
- 自己複製能をもつこと
などの性質をもつことにより支持されています。
一方で筆者らは、現代の生命において機能の中心を果たしているタンパク質分子こそ、生命の起源となり得ると主張しています。タンパク質を生命の起源として考えた場合、大きな課題となるのは、いかにして多様な配列空間から機能性分子を探索するかという問題です。タンパク質は DNA/RNA に比べると、アミノ酸種が多い分、探索すべき空間自体が広くなります。またタンパク質、特に低分子量のペプチドは分解耐性が低いので、長期間その構造を維持することが難しいと考えられます。
筆者らは、これらの問題を解決する基本原理となる、Foldcat というメカニズムを解説しています。このメカニズムでは、”Founding Rock” と呼ばれる担体の上で、ペプチドが合成されるところから始まります。Founding Rock 上で合成されたペプチドには徐々にアミノ酸が結合し、酵素活性を示す折りたたまれたタンパク質構造 (Foldcat) を形成していきます。その酵素上で新しいタンパク質鎖が近接すると、そのタンパク質鎖に対して伸長反応を促し (Folded Catalysis)、新たなタンパク質鎖が合成されていきます。
この反応を実現するには大きく2つの要素が重要です。
まず一つは、タンパク質の構造や機能はアミノ酸側鎖の疎水性と極性に強く依存しているということです。天然で活用されるアミノ酸の種類自体は20種類ありますが、同種の性質を示すアミノ酸が共通の役割を果たすと考えれば、理論上よりも狭い探索空間から機能性タンパク質を見出せると考えることができます。
もう一つの重要な要素は、短いペプチドから2次構造、3次構造へと段階的に構造を複雑化させているということです。安定した2次構造をベースに複雑な構造を形作ることで、安定したタンパク質を設計できる実現可能性が高まります。
このような仕組みを人工的な分子進化工学に応用することができれば、人為的に多様な機能をもつタンパク質を設計できる可能性も高まるでしょう。