【抗体スクリーニング】遺伝子編集技術でナノボディライブラリーを作製する方法

論文タイトル

In Vitro Nanobody Library Construction by Using Gene Designated-Region Pan-Editing Technology

出典

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要旨

遺伝子編集技術を活用したナノボディライブラリの作製技術を紹介した論文です。

解説など

遺伝子ライブラリの設計手法には大きく、

  • static library
  • dynamic library

の2つに分類されます。前者は遺伝子合成技術を活用した大規模ライブラリ、後者は AID などを活用したスクリーニングと並行して逐次的に変異を導入する手法です。後者の方が常に活性の高いデザインを鋳型に変異を積み増すことができるので親和性増強目的には有効であると考えられます。

既存の dynamic libary 作製技術として、筆者らは

  • Alphavirus sindbis
  • ADI

などを既存例に挙げています。いずれも部位非特異に変異が挿入されることや変異の導入効率が低いことが課題です。そこで筆者らは遺伝子編集技術を活用することでこの課題解決を試みています。彼らは特にナノボディの CDRs (HCDR1/HCDR2/HCDR3) 特異的に変異を挿入する手法開発に取り組んでいます。

彼らは大きく次の2つのアプローチで遺伝子ライブラリの作製を検討しました。

  • G-quadruplex
  • gRNA-Guided/nCas9-Tethered Base Editors

G-quadruplex とは、以下の配列をもつ DNA が示す特徴的な2次構造です。

G(≥2)N1-7G(≥2)N1-7G(≥2)N1-7G(≥2)

一般に遺伝子編集酵素は single-strand しか認識しないので、遺伝子編集の際には必ず対象の DNA をsingle strand 化する必要があるのですが、この配列をもつ DNA はその相補鎖が single-strand の構造になるため遺伝子編集タンパク質が認識できます。このメカニズムをもとに特定の部位に遺伝子変異を挿入するのが G-quadruplex 法です。

対して、gRNA-Guided/nCas9-Tethered Base Editors は、nCAS9 による遺伝子編集を gRNA が認識する部位特異的に引き起こす手法です。3か所の CDR に変異を挿入する場合は3種類の gRNA が必要になります。筆者らは polycistronic-tRNA-gRNA (PTG) system という手法を用いて、3つの gRNA を連結した状態で細胞に導入しそのすべてを同時に転写させるテクニックを活用しています。遺伝子編集酵素には、

  • BE3: APOBEC–XTEN–nCas9–UGI
  • AIDmut1: AID with active mutations and NES partial depletion
  • AIDmut2: AID with active mutations and NES full depletion

の3種類を検証しています。この中でも AIDmut1, AIDmut2 は高い遺伝子導入効率を示したとのことです。AIDmut1, AIDmut2 それぞれの変異導入率は、9.71/1000 bp−1、7.87/1000 bp−1 でした。

結論として、G-quadruplex 法は変異の導入効率が低くまた挿入される変異に偏りがあるとのことで、gRNA-Guided/nCas9-Tethered Base Editors の方が優れていたという結果でした。

効率的な分子進化にはさらに変異の導入率を改善させることが望ましいと感じます。また活用している遺伝子編集酵素には cytidine base-editor に限定されていますので、今後は adenine base-editor などとの併用が必要だと筆者らは述べています。