論文タイトル
A high-throughput platform for biophysical antibody developability assessment to enable AI/ML model training
出典

A high-throughput platform for biophysical antibody developability assessment to enable AI/ML model training
Antibodies must bind their targets with high affinity and specificity to achieve useful therapeutic activity. They must also possess additional properties—colle...
要旨
抗体の developability を評価する HT プラットフォーム PROPHET-Ab について紹介した論文です。
解説など
Ginkgo Bioworks はアメリカのバイオテクノロジー企業です。彼らは医療から農業・食品分野まで幅広く手掛け、バイオテクノロジーに関わる開発プラットフォームを顧客に提供しています。筆者らは本論文で、抗体の developability を評価するプラットフォームを公開しました。
具体的には下記のような評価をハイスループットを取得する基盤で、そのシステムを PROPHET-Ab と名付けています。
特性 | 評価法 |
発現量 | Clarified harvest titer |
純度・モノマー率 | SEC, rCE-SDS |
熱安定性 | nanoDSF, dye-based DSF |
疎水性 | HIC, SMAC |
自己会合性 | AC-SINS, DLS-kD |
ポリリアクティビティ | CHO-SMP, Ovalbumin bead assay |
PROPHET-Ab は、IgG、VHH、Fabsなど複数の抗体様スキャフォールドに対応しています。各アッセイ結果は AI/ML 訓練向けの tidy data 形式で出力され、LIMS と統合され管理ているとのこと。
本論文では、臨床入りした246 抗体について各アッセイデータを取得し、各評価指標間の相関関係について考察しています。以下は結果概要です。
主な知見と考察
1. 各アッセイの再現性・信頼性
- Jain et al. 2017などの旧来法と高い相関を示し、HT法の妥当性を実証。
- 特にHIC(ρ=0.97)、SMAC(ρ=0.91)、AC-SINS(ρ=0.89)などは旧法とよく一致。
2. IgGサブクラスの影響
- IgG4はモノマー率や熱安定性が低めで、開発適性の面でリスクあり。
- IgG1/2は高モノマー率だが、一部で断片化が見られる。
3. Polyreactivity は CHO SMP と Ovalbumin 間で高相関
- Ova は CHO SMP の代替として初期スクリーニングに有効。
- Jain法(酵母表示)との相関は低く、測定形式による差異が大きい。
AI/ML予測モデルの訓練
モデル概要
- 抗体配列から ESM-2 などの pLM 埋め込み特徴量を取得
- 線形回帰により各開発適性指標を予測
- ESM-2 (8M) がベースライン(one-hot)より優れるが、パラメータ数の増加は大きな差を生まず
予測精度
- データセットサイズを増やすほど Spearman 相関が有意に向上
- 特性によっては、100サンプルあたり0.02〜0.05程度向上(Fig. 9f)
Jain データセットと本手法に基づく、アラートのスレッショルド値が大きく異なるのが印象的で、やはり同一実験環境で取得された実験値を扱うことの重要性が示唆されます。