【タンパク質デザイン】リン酸化に応答して細胞骨格フィラメントを形成するデノボタンパク質をデザイン!

論文タイトル

De novo design of inducibly assembling multi-component filaments

出典

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要旨

デノボ設計によって制御可能な多成分性タンパク質フィラメント(繊維状構造体)を創製する新技術を報告しています。

解説など

研究の目的

自然界のタンパク質フィラメント(例:微小管)は、複数の構造的コンポーネントから構成されることで高度な機能と制御性を持ちます。一方、これまでのデノボ設計フィラメントは単一成分での自己集合体が主でした。

本研究では、

  • 2成分または3成分のタンパク質フィラメント
  • 誘導的に集合(混合によって初めて形成される)
  • リン酸化などの細胞内シグナルにより組み立てが制御できる

という機能を持つ、人工フィラメントの設計と実証を行っています。

設計鋳型タンパク質の種類

以下の3種類の設計済みヘテロ構造体を出発点としています。

系列特徴利点
DHD(Designed Helical Hairpin Heterodimers)2本鎖のヘリックス型ダイマー。水素結合ネットワークで相互作用高い特異性・多様なペアを設計可
DHT(Designed Heterotrimers)3成分のヘリカル三量体さらなる複雑な構造の構築が可能
LHD(Layered Heterodimers)βシート型インターフェース。再構成可能単独でも可溶性が高く、逆可的な組立が可能

設計手法

筆者らは、これら3種類の鋳型構造体から、重合体を形成するフィラメントの設計を行いました。

  1. ヘリカル対称性を持つフィラメントのバックボーンを生成:
    • ヘリカル対称性:鋳型のサブユニットを一定距離だけ軸方向に平行移動し、一定角度だけ回転することで繰り返し配置する対称性
    • 鋳型構造を z 軸方向への平行移動(rise)、z軸周りの回転(rotation)を変化させて多数の候補配置を作る
      • Rosetta と「helical docking & design」プロトコル(Shen et al., Science 2018)を活用
    • 195,000本(DHD)、163,900本(DHT)、74,051本(LHD)を設計
  2. 構成要素すべてにまたがるインターフェース設計:
    • 各界面が全サブユニット(2成分 or 3成分)に関与するよう制限
      • 単独では集合しない設計にするため
  3. フィルタリング基準(Rosettaのスコアを用いた物理的基準):
    • 結合状態(polymeric)と非結合状態(monomeric)とのエネルギー差:REU ≤ –15
    • インターフェース面積:> 700 Ų
    • 形状補完性(shape complementarity):SC > 0.62
    • 未満足の極性残基数:< 5
    • 不要な変異は元に戻し、トップスコア構造を選出

 選抜された構造数:

  • DHD_HFs:55種類
  • DHT_HFs:41種類
  • LHD_HFs:70種類

結果

筆者らは各デザイン成分を別々に精製し、混合することで初めてフィラメントが形成されることを、電子顕微鏡と蛍光顕微鏡で検証し確認しました。

また各成分要素の末端を7残基程度削ったフラグメントを生成することで、重合阻害剤として機能することを確認しました。またこのブロッカーにリン酸化サイトを付与することで、リン酸化に応答してブロッカーが外れ重合を開始できることも示しています。