論文タイトル
Computational design of novel protein-protein interactions – An overview on methodological approaches and applications
出典
Curr Opin Struct Biol. 2022 Apr 8;74:102370.
確認したいこと
- バインダーデザインを中心とした、タンパク質のde novo デザイン手法
要旨
標的タンパク質に結合するタンパク質をデザインする手法をまとめた総説です。
章立て
- 緒言
- テンプレートベースデザイン
- de novoデザイン
- 課題と展望
解説など
本論文は、結合タンパク質のデザイン手法をまとめた総説になります。特定の標的タンパク質に特異的に結合できる分子をデザインすることは、医工学への応用に寄与します。
本総説では、大きく以下の2つに分類して、手法開発の歴史を概観しています。
- テンプレートベースデザイン
- de novo デザイン
テンプレートベースデザインについて
テンプレートベースデザインは、既知のタンパク質ドメイン構造を移植して、分子デザインする手法です。主鎖・側鎖それぞれを鋳型として適応する手法が存在します。
歴史的には、側鎖のグラフティング手法が最初に登場し成功事例が積み上げられてきました。しかし、モチーフが複雑すぎて構造的に適合する足場が見つけられない場合、側鎖のエンジニアリングだけでは限界があります。
このことから近年では、主鎖と側鎖の両方をグラフティングできる手法が多数報告されています。
複雑な構造のエピトープに適応するための特徴的なアプローチとして、Fold From Loops(FFL)プロトコルがあります。FFLは、グラフトされたモチーフを安定化させるために、フォールディング予測とデザインのプロセスを一体化させる手法です。
一方でこのFFLにも、以下の課題が存在します。
- 不連続エピトープに対する適合性が低い
- 移植元の構造に非常に近いデザインに制限される(テンプレートベース自体の課題?)
1. の課題に対処したのが、FunFolDes、2.の課題に対処したのが、TopoBuilderと呼ばれるプロトコルです。
このあたりから、天然のタンパク質に対してでなく、de novoデザインされた非機能性タンパク質に適応して、機能を付与するデザイン例が増えていきます。従ってテンプレートベースとde novoデザインとの境界線も曖昧になっていく印象です。
de novo デザインについて
de novo デザインは、以下の2種類の手法に細分されます。
- dock & optimize
- hotspot centric
「dock & optimize」は、以下の2段階のステップを経てデザインする手法です。
- 多数のタンパク質骨格を標的タンパク質にドッキングして、形状的に相補性のある構造を探索する
- 結合強度を改善するために、最適な結合界面の残基を計算科学的に探索する
この手法の特徴は、正確なエネルギー力場と、骨格構造ライブラリに大きなプールが必要であることが挙げられます。従って、側鎖を含めた最適化には、ウェット的なin vitro分子進化手法と組み合わせることが望ましいと考えられます。
「dock & optimize」の代表的なプロトコルには、Rosettaに基づくDDMI (Docking, Design, Minimization and Interface)があります。
一方「hotspot centric」は、結合界面を中心としたホットスポット残基を、標的タンパク質上に配置してから、適切な足場タンパクを移植する方法です。
おおざっぱに「dock & optimize」と「hotspot centric」は、逆の順序でデザインするイメージです。複数の実施例から、「hotspot centric」の方が、「dock & opitimize」よりも優れた成績であることが示されています。
しかし、成功率の低さとin vitroでの最適化が必要である点は、いまだに課題です。
近年では、RIFドッキングを採用したde novoデザイン手法が、着実に成果を上げています。これはデザインコンセプトとしてはdock&optimizeに当たる方法になりますので、両アプローチとも否定された状況ではないということでしょう。
本論文では、深層学習を活用した最新の事例は紹介されていませんでした。バインダーデザイン用途にもこれらの手法が適用され、精度改善されることが望まれます。
コメント