論文タイトル
A Brief History of De Novo Protein Design: Minimal, Rational, and Computational
出典
J Mol Biol. 2021 Oct 1;433(20):167160.
確認したいこと
タンパク質の計算機デザインについて、レビュー稿を作成しようと考えています。代表的なレビュー論文を参照しました。
要旨
タンパク質をデノボでデザインするための研究を、歴史を追って概説したレビュー論文です。
章立て
- 緒言:タンパク質のエンジニアリングからデザインへ
- 構造を通じたタンパク質デザインの簡単な歴史
- タンパク質デザイン手法の進化:ミニマルからラショナルなアプローチへ
- コイルドコイル集合体
- タンパク質デザインの革命:計算手法の出現と確立
- 結言
解説など
本総説の特徴は、技術だけでなく、その技術を開発した研究者にもフォーカスをあてた記述がみられることです。
筆者らは、デノボデザインのアプローチを、以下の3つのカテゴリーに分類することを提唱しています。
- Minimal protein design
- Rational protein design
- Computational protein design
“Minimal” protein designは、疎水性相互作用のような単純な化学原理を利用して、タンパク質をデザインする手法です。例えば極性残基(p)、疎水性残基(h)の組み合わせパターン(αヘリックス:hphphppp…、βシート:hphphp…など)からその構造を見積りデザインします。
これに対し、”Rational” protein designは、Minimal protein designより、さらに特異的な配列・構造関係を考慮してデザインする手法です。例えば、タンパク質の進化情報などを取り入れることがそれにあたります。ホモロジーの高いタンパク質の配列と構造の関係性を活用するということです。
最後の”Computational” protein designは、多数の異なる配列をサンプリングし、それを原理論的なモデルを用いてスコアリングする手法です。これを計算機を利用して効率的に行うのが本手法に当たります。
先日紹介した記事でも、技術変遷に沿ったデザイン手法の分類について紹介しました。
本論文との対応は、おおよそ以下のようになっていると思います。
- Minimal protein design ⇔ Manual protein design
- Rational protein design ⇔ Computational design guided by fundamental physicochemical principles
- Computational protein design ⇔ Fragment-based and bioinformatically informed computational protein design
このような技術の変遷は、デザインされるタンパク質の構造の複雑性にも反映されます。本文の図2では各年にデザインされたタンパク質構造の代表例が、構造図とともに紹介されています。年代が若くなるにつれて、デザインされた構造がαヘリックスから、それらが密集したコイルドコイル、そしてβシート様構造へと移っていることが見て取れます。βシート構造のデザインが難しい理由は、βシート構造どうしで集合するため、凝集してしまう可能性が高いためです。αヘリックスであれば、疎水性コアが内部に充填されているため、モノマーとして調製できる可能性が高まります。
今後のデノボデザインの課題として、筆者らは以下の3点について言及しています。
- 力場の計算手法を改善すること
- 動力学を取り入れること(多状態を考慮したデザイン)
- 結合や触媒活性などの機能をデザインすること
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