【バインダーデザイン】β-シート間相互作用で結合界面をデザイン

論文タイトル

Computational design of a symmetric homodimer using β-strand assembly

出典

Proc Natl Acad Sci U S A. 2011 Dec 20;108(51):20562-7.

Computational design of a symmetric homodimer using β-strand assembly - PubMed
Computational design of novel protein-protein interfaces is a test of our understanding of protein interactions and has the potential to allow modification of c...

確認したいこと

タンパク質ベースのバインダーデザインについて、深層学習以前の手法開発の歴史をさかのぼって調査しています。

要旨

β-シート間相互作用で2量化するタンパク質を人工的にデザインした事例報告です。

解説など

本論文の報告以前では、結合界面のデザインは、α-ヘリックス間か、α-ヘリックスと標的抗原の溝との相互作用を対象としている事例が主流でした。本論文では、β-シート間の相互作用を対象とした界面デザインを試みている点で新規性があります。筆者らは、1つのタンパク質を対象に、ホモ2量体を形成するβ-シート界面のデザインに取り組んでいます。

デザインの手順は以下のとおりです。

  1. 構造データベース由来の5,500個のタンパク質から、表面にβ鎖が露出したタンパク質を探索する
  2. ホモ2量体を形成する可能性があるタンパク質をスクリーニングする
    • β-シート間相互作用に適した主鎖間水素結合距離を計算し、2量体配座を生成する
    • 主鎖原子が衝突しない配座を選択する
  3. 結合エネルギーと界面サイズの観点から、適切なホモダイマーを選択する
  4. その他の観点から不適切な構造を除外する
    • 過去に大腸菌で発現実績がない
    • 天然でオリゴマーを形成する
    • 分子間β-シート結合が結晶構造から示されている
    • 500残基以上のタンパク質である
    • β鎖が球状ドメインの一部ではない
  5. 対称性タンパク質ドッキングと、配列最適化を5ラウンド繰り返す
    • 各サイクルから、total score、結合ΔG、β鎖水素結合エネルギーの観点でトップ10%のデザインを選抜する
  6. コア領域の水素結合を形成していない極性残基数、パッキングのクオリティ、結合ΔG/SASAでデザインを選抜する

最終的に4つのデザインをウェットで検証し、うち1つがホモダイマーを形成したとのことです。β-シート界面以外は疎水性相互作用の寄与が大きかったとのことで、新しい水素結合ネットワークの形成が困難であるという、既往の課題を再現した結果でした。

デザイン過程に特質した点は少なく、初期の成功事例として、頭にとどめておくのが良いと思います。

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