論文タイトル
Computation-guided backbone grafting of a discontinuous motif onto a protein scaffold
出典
Science. 2011 Oct 21;334(6054):373-6.

確認したいこと
タンパク質ベースのバインダーデザインについて、深層学習以前の手法開発の歴史をさかのぼって調査しています。今回は剛体でのモチーフグラフティングの既存の手法について紹介します。
要旨
HIV gp120の不連続なエピトープを対象に、モチーフグラフティングを実施した事例を紹介した論文です。
解説など
本論文では、モチーフグラフティングのための手法を紹介しています。
デザインワークフローは下記のとおりです。
- スキャフォールドをPDBに登録された天然構造から探索する
- モチーフセグメントを天然スキャフォールドに置換
- ライブラリデザイン
- in vitroスクリーニング
1) では、スキャフォールド探索のために「マルチグラフトマッチ」というメソッドを利用しています。1つのスキャフォールドに対して4つの挿入位置を検討して、低分解能の予測で最適なグラフト構造を探索します。これはRosettaのモデリングパッケージに実装されている手法です。
2) のグラフティングは、剛体配向を用いておこないます。こちらでは「マルチグラフトデザイン」と呼ぶアルゴリズムが利用されています。2) までで探索されたグラフト構造から、標的抗原に結合するスキャフォールドをSPR試験で単離します。
3) では、同定した鋳型スキャフォールドを元に、変異導入ライブラリをデザインしています。
4) のin vitroスクリーニングでは、酵母ディスプレイシステムを利用して最適な配列を同定します。
筆者らは、上記の手法を HIV gp120エピトープのグラフティングに適用しています。これは、不連続なエピトープ構造を有していることから、グラフティング難度の高いエピトープと認識されています。このエピトープに結合することが知られているb12という中和抗体クローンの結合を指標に、天然のエピトープ構造を維持したグラフティングができているかを確認しています。
FigS1, S2にデザインアルゴリズムの詳細が記載されていますので、ぜひご参照ください。
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