論文タイトル
In Silico Approaches to Deliver Better Antibodies by Design: The Past, the Present and the Future
出典
確認したいこと
抗体のデザインに関連するレビュー論文が公開されていたので、フォローできていない文献がないか確認してみました。
要旨
抗体医薬品の分子デザインに関わる技術をレビューした文献です。
章立て
- 緒言
- 古典的なアプローチ:特定範囲の最適化バリアントのデザイン
- 現代的なアプローチ:開発可能性の改善に向けたデザインライブラリの活用
- AI/MLを利用したヒット最適化のためのディスプレイライブラリデザイン
- ヒット同定のためのライブラリデザイン
- 免疫またはナイーブライブラリ
- 合成ライブラリ
- 深層生成モデル由来のライブラリ
- 新興的なアプローチ:開発可能性の高い抗体医薬品のデノボデザイン
- 結言と展望
解説など
本レビュー論文の特徴は次の通りです。
- 開発可能性(developability)の改善に主眼をおいている
- 実践的なアプローチを紹介している(要素技術だけでなく、スクリーニング戦略などのシステマチックな内容を含む)
- “classical”、”contemporary”、”emerging” と、開発の時系列もしくはアクセスの容易さの観点から、技術を分類している
1点目の開発可能性については、Bococizumab (anti-PCSK9) や Stamulumab (anti-myostatin) などの臨床開発事例を具体的に紹介しながら、その重要性を指摘しています。
開発可能性に関わる指標には、免疫原性や、発現量、粘性など様々あり、またそれらと相関するマーカーとして、pIや疎水性などが挙げられると思いますが、各ファクターを統合して考察する困難さが課題です。
またこれらを解決するためのアプローチとして、大きく分類すると、分子デザインによるアプローチと、スクリーニングによるアプローチがあります。筆者らは、”classical”、”contemporary”、”emerging” と成熟度に沿って技術を紹介していますが、最新で報告されているアプローチほど、分子デザイン関連の技術が多く感じます。これは深層生成モデルの隆盛に起因することは言わずもがなです。
本文では、一貫して早期に開発可能性を評価する大事さを主張しています。取得されたヒットが複数ある時は、最適化され得る伸びしろがそれぞれのクローンで異なることから、できることなら複数検体を最適化に進めることを推奨しています。開発後期に出戻るリスクも考慮してマインドセットすることが大事との主張です。
筆者らは、優先すべき開発可能性の指標をtier分類しています。
Tier 1:薬理活性が変わらない改変
- ヒト化
- PCR由来の変異の除去
Tier 2:低スループットアッセイに影響を与える恐れがある要素
- 疎水性パッチ
- 荷電パッチ
Tier 3:CQAを満たす要素
- 脱アミド、異性化モチーフの除去
- 酸化部位の除去
- 糖鎖修飾部位の除去
Tier 4:評価信頼性の低い要素
- T細胞エピトープの除去
- PKの改善
- コロイド安定性の改善
“emerging”技術の節では、AIベースの手法が紹介されています。生成モデルを活用した手法と、バーチャルスクリーニングを用いた手法です。以前に紹介したものについては、過去の記事のリンクを貼っておきます。
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