論文タイトル
Visualization of molecular interactions by fluorescence complementation
出典
Nat Rev Mol Cell Biol. 2006 Jun;7(6):449-56.

確認したいこと
本日もスプリットタンパク質に関するレビュー論文です。
スプリットタンパク質のコンストラクションや詳細な分子動力学について調査しました。
要旨
スプリットタンパク質を用いた2分子蛍光分析法についてレビューした論文です。
章立て
- 緒言
- タンパク質断片相互作用を利用した分子間相互作用の検出
- タンパク質間相互作用を探索するためのタンパク質断片の同定
- タンパク質断片の自発的かつ促進された会合
- 分子近接効果の解析
- 2分子蛍光補完法
- BiFC複合体の特性
- BiFCに利用される融合タンパク質のデザイン
- BiFC蛍光複合体の動力学
- 複合体相互作用によるBiFc複合体の安定化
- BiFC複合体形成の特異性
- 蛍光タンパク質断片の選択
- 蛍光技術を用いたBiFC複合体の特徴解析
- BiFCの応用事例
- ユビキチンファミリーペプチドコンジュゲートの可視化
- 分子スキャフォールド上のタンパク質間相互作用の可視化
- BiFC複合体の安定化を利用した戦略
- 今後の展望と課題
解説など
本論文も先日紹介した論文に引き続きBiFC関連のスプリットタンパク質について紹介しています。この文献の特徴は、タンパク質工学技術の視点からBiFCの特徴を解説している点です。タンパク質の断片化を予測する普遍的な手法やアルゴリズムは、当時報告されていませんでした。したがって個々の事例で明らかとなった課題を抽出し考察したのが本論文です。
これまでスプリット化されたタンパク質の特徴のひとつは、βシート構造を多く含むことです。これは相互にアセンブルするタンパク質間の形状相補性を保持する必要があるためであると考察できます。一方で断片化されたタンパク質が、再構成されたときの構造をそのまま保持していないというのもよくあるケースです。断片化されたタンパク質は再構成することでその分子自体の安定性も増すことがあります。それくらいスプリット化はリスクが高くシビアなエンジニアリングであるといえます。
融合タンパク質の相互作用によって、断片化タンパクの再構成が促進された場合、その再構成にかかる時間はおよそ数分であることが、これまでの実施例から推察されます。したがって数秒レベルのリアルタイムモニタリングは、スプリットシステムでは難しそうです。
フラグメント間の再構成する力は、分子拡散が可能な空間距離の3乗に比例するといわれています。したがって、単独のタンパク質断片間で相互作用できる可能性は、限りなく低いと考えられます。これが、融合タンパク質間の相互作用で初めて再構成することを説明しています。
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