論文タイトル
A general approach for selection of epitope-directed binders to proteins
出典
https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2022.10.24.513434v2
要旨
標的エピトープに結合するバインダーを、優先的にスクリーニングで選抜するための方法論を紹介した論文です。
解説など
筆者らは、ファージディスプレイ法で抗体をスクリーニングする際に有用な、エピトープ指向のセレクション方法を開発しています。具体的には、標的抗原の狙いたいエピトープをアラニン残基で置換したデコイタンパク質をデザインして、それをネガティブセレクション用の抗原に使用することで、望まないバインダーを取り除く方法です。これだけだと、新規性は乏しいのですが、筆者らはデコイデザインのために、抗原のどのポジションに変異を導入すべきかを、構造統計的に分析しているのが特徴です。
まず、AbDb から取得できる、およそ 1,200 種類の抗原・抗体複合体構造を対象に分析を行いました。そこから得られた知見は次のとおりです。
- 6~21残基の非線形構造がエピトープとなる
- 接触残基の60%は非構造化またはループ構造、ヘリックスとシート構造はそれぞれ20%
- サイズの大きな側鎖(D, E, K, N, Q, R, W, Y)が接触残基になりやすい
上記の結果から、デコイ分子のデザイン手順として、筆者らは下記を推奨しています。
- PDB または AlphaFold による予測モデルから狙いたいエピトープを定義する
- 変異を導入する箇所はループ内にあるサイズの大きい極性残基(D, E, K, N, Q, R)を優先する
- これらのうち、4~6残基をアラニンに置換する
筆者らは本アプローチを、下記に示す抗原に対して適応し、望みのバインダーを取得することに成功しています。
- CDCP1
- MMP9
- MMP1
- MMP3
- EphA2
複雑なアルゴリズムを活用した手法ではなく、Tips 的な内容のレポートですが、だからこそあらゆる場面で簡便にトライできるので、ぜひ参考にしていただけたらと思います。