【抗体デザイン】局所的な残基間相互作用をもとに親和性増強改変を探索する方法

論文タイトル

Development and experimental validation of computational methods for human antibody affinity enhancement

出典

https://academic.oup.com/bib/article/25/6/bbae488/7808366?login=false

要旨

抗体の親和性増強改変を探索する手法を紹介しています。

解説など

今回紹介する親和性増強改変の探索手法は独特で、構造既知の多様な抗体・抗原複合体の構造情報から局所的な相互作用残基ペアを抽出して、その統計的な出現頻度に基づいて配列設計を行っています。

具体的には、データセットとして SAbDab に登録されている 5,935 種類の抗体複合体構造を利用し、そこから距離 6Å 以内の相互作用アミノ酸ペアを抽出しています。

候補となる改変を選抜したら、MD シミュレーションや Metadynamics 解析を行い、改変体の妥当性を追評価する流れです。

筆者らは H7N9 virus に対する抗体 (3L11, affinity: 5.32 nM) に対して本手法を適用したところ、実際にランダムに入れた変異レパトアと比較して、構造が安定で、発現量が高く、抗原への結合活性の高い変異が選抜できたことを報告しています。デザインした改変の中には、最大で WT と比べて2.5 倍結合親和性の高い改変が含まれていたとのことです。

筆者らはさらに、この相互作用残基ペアを訓練した深層学習モデル DeepGCN_Anti を構築しています。このモデルを用いて各改変体の結合・非結合の2値分類タスクを解いたところ、検証データで以下の性能を示したとのことです。

  • AUC: 0.83
  • TPR: 0.49
  • precision: 0.89
  • accuracy: 0.68
  • MCC: 0.45

precisionは高いものの TPR が低いことからモデルの偽陰性は高く、有望な改変を取りこぼすリスクが高いのが懸念です。筆者らは学習データセットのサイズが増えれば、性能が上がると予想しています。

既往の予測モデルと比較して、本法の特徴量抽出手法がどれくらい有効かが気になるところです。

コードはこちら。

GitHub - haiping1010/DeepGCN_Anti
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